1970年代の韓国の漁村を舞台に、海女たちが再起をかけた大勝負に出る海洋クライムアクション。キム・ヘスヨム・ジョンアが海女役でW主演。チョ・インソンがベトナム戦争帰りの密輸王を熱演と、韓国トップ俳優たちが顔を揃えた『密輸 1970』。韓国では、大鐘映画祭監督賞や青龍映画賞最優秀作品賞などを受賞し、大ヒットを記録した。

 一攫千金を求めて、海女、密輸王、チンピラ、税関が闘いを繰り広げる本作。海中アクションだけでなく、舞台となる70年代の風景、陸の上のアクションも魅力たっぷりだ。夏にぴったりな爽快&痛快なアクション大作を生み出したリュ・スンワン監督に話を訊いた。

■「チョ・インソンをカッコ悪く撮るほうが難しい。クローズアップされるたびの破壊力が半端ない俳優」

――本作は、70年代のカラフルなファッションやレトロな音楽などに彩られているのも大きな魅力です。キム・ヘスさんのヘアスタイルは、まるで70年代の米ドラマ『チャーリーズ・エンジェル』の登場人物のようでした。

「実は、私は『チャーリーズ・エンジェル』の女優ファラ・フォーセットの大ファンだったんです。なので、そういうスタイルで表現したいと思っていたところ、何とキム・ヘスさんもそのように考えていて、本当にウソみたいに、同時に、この案が出たんです(笑)。でも、撮影当時、キム・ヘスさんは髪が短かったため、仕方なくウィッグを被っての撮影となりました。

 ただ、あのヘアスタイルを具現化するには2つの問題がありました。1つ目は、70年代に流行していた髪型なので、あのパーマの技術をもったヘアデザイナーがなかなかいなかったこと。韓国では当時、ああしたウェーブヘアを作るにはコテ(ヘアアイロン)を練炭に置いて温め、それで髪を巻いていたんです。ところが、キム・ヘスさんがどこからかそれができる方を連れてきてくださり、その問題は解決しました。

 もう1つの問題は、日本と同じように、韓国の夏もものすごく蒸し暑い。そうすると、あのウィッグが湿気によって、どんどんボリュームがなくなっていくんですね。だから絶えず触りながらボリューム感を維持しなければならなかったんです」

――劇中でも、実はウィッグだった!という設定になっていたのが、ユニークでした。

「キム・ヘスさんは、あのヘアスタイルで撮影をするために、私たちよりもだいたい2時間前に撮影現場に入って準備をしていました。本来のシナリオにはなかったのですが、それだけ大変ならば、映画の中にネタとして取り入れてしまおうということになったんです。

 あのウィッグのエピソードを注意深く見ていた観客であれば、こんなことを想像するかもしれません。ジンスク(ヨム・ジョンア)が刑務所でずっと担当していたのは、ウィッグを作る仕事だったんです。もしかしたら、チュンジャ(キム・ヘス)が被っていたウィッグはジンスクが作ったものかもしれない……と」

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