韓国のベテラン女優、ナ・ムニは、実に60年以上に亘り数多くの映画やドラマに出演しているマルチ女優だ。

 ソン・ガン主演ドラマ『ナビレラ-それでも蝶は舞う-』では、70歳にして、長年の夢だったバレエを習い始めるドクチュル(パク・イナン)に苦言を呈しながらも、温かく見守る妻ヘナムを、韓国映画怪しい彼女』では、心だけ20代に若返った70代のハルモニ(おばあさん)をそれぞれ演じた。

 そんな名バイプレイヤーのナ・ムニが、映画『オ!ムニ』(2020年/Prime VideoU-NEXTほかで配信中)では認知症のハルモニを演じ、笑いと涙を誘う。(以下、一部ネタバレを含みます。)

■映画『オ!ムニ』の見どころは?ハルモニと保険調査員の息子がひき逃げ犯を探す!

●『オ!ムニ』あらすじ

 保険会社の次長でベテラン調査員のファン・ドゥウォン(イ・ヒジュン)は、認知症を患う母ムニ(ナ・ムニ)の面倒を見ながら、1人娘のボミを男手ひとつで育てていた。

 ある日、ドゥウォンがキャバレーで酒を飲んで遊んでいる間に、ボミがひき逃げ事故に遭う。唯一の目撃者は、孫娘と一緒にいたハルモニ(おばあさん)のムニと飼い犬のエンジャだけだ。入院中のボミは、意識不明の状態が続く。

 犯人の手掛かりが見つからず、警察の捜査が行き詰まる中、ムニの言動から思いがけず手がかりを見つけたドゥウォンは、ムニと犯人捜しに奔走する。

●見どころ

 本作の舞台は、忠清南道の錦山(クムサン)。序盤に登場する黄金色の稲穂がたなびく田園風景が美しく、印象に残る。そんなのどかな田舎町で繰り広げられるコメディ捜査劇が『オ!ムニ』だ。

 チュ・ジフンハン・ヒョジュ主演『支配種』では一癖ある国務総理ソン・ウジェ、ソン・ソックチェ・ウシク主演『殺人者のパラドックス』では元刑事ソン・チョンを演じたイ・ヒジュンが、本作では認知症の母親に翻弄されながらも、最愛の1人娘をひき逃げした犯人捜しに躍起になる父親を精力的に演じている。

 タイトルの『オ!ムニ』は、主人公の名前「ムニ」と、韓国語で「母」を意味する「オモニ」の忠清道方言「オムニ」をかけたものだという。そんな母親役のムニと子供時代のドゥウォンの間にあった、あるエピソードに胸を締め付けられる。

韓国映画『オ!ムニ』の舞台となった忠清南道・錦山で販売されていた6年物の高麗人参