ウェブトゥーンが原作のサスペンススリラー『運の悪い日』の配信がNetflixで始まった。温厚な性格のタクシードライバー(イ・ソンミン/『財閥家の末息子』『ソウルの春』『KCIA 南山の部長たち』)が、お金欲しさに長距離運転を引き受けるが、その乗客(ユ・ヨンソク/『応答せよ1994』『賢い医師生活』『その電話が鳴るとき』)は人を殺めることに快楽を覚える連続殺人犯だった……というところから物語は展開していく。

 前半は、タクシーという密室での鬼気迫るスリラー、後半は、まさかのどんでん返しを含むサスペンスという構成で、見始めたら続きが気になりやめられなくなる。(以下、一部ネタバレを含みます)

■サスペンススリラー『運の悪い日』見どころは?イ・ソンミン&ユ・ヨンソクの演技力に着目!

「お金欲しさに長距離運転を引き受けるタクシードライバー」といえば、ソン・ガンホ主演映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を思い浮かべる。隠された事実を広く世界に伝えるために、光州民主化抗争の現場に飛び込むドイツ人記者とタクシードライバーが、光州市民を弾圧する軍部と戦う姿が描かれ、多くの人々の感動を呼んだ。

 一方、ドラマ『運の悪い日』では、友人に騙され、多額の借金を背負うことになったお人よしのオ・テク(イ・ソンミン)が、息子が使い込んだ娘の学費の埋め合わせをするために、ムクホまでの長距離運転を求める乗客(ユ・ヨンソク)に、倍額の運賃を持ち掛ける。

 その日の朝、たくさんの豚が登場する縁起の良い夢を見たテクは、ようやく自分に運が向いてきたと考え、意気揚々と車を走らせる。ところが、その乗客が「自分は恐怖や痛みを感じない」「人を殺すのは簡単」と、恐ろしい言動をひけらかし始め、テクは徐々に恐怖を感じ始める。

 タクシードライバーを演じるイ・ソンミンは、『ミセン-未生-』のオ・サンシク課長さながら、人の好さが前面に出ているキャラクターなのだが、乗客の正体がわかるにつれ、顔が引きつり身体は震え、助けを求めようと努力を繰り返すが報われない。恐れおののき、やつれていくドライバーの姿を、イ・ソンミンが迫真の演技力で表現している。

 自分の不甲斐なさが原因で離れ離れに暮らす家族と、再び一緒に暮らしたいという夢を持つテク。ところどころにテクの家族を思う気持ちが痛いほどわかる場面が登場し、涙を誘う。

 不気味な乗客を演じるユ・ヨンソクは、『応答せよ1994』や『賢い医師生活』での爽やかでソフトなイメージとは正反対で、危険な目つきと言動により、タクシーという密室でテクを恐怖のどん底へと落とし込む連続殺人犯を怪演している。

 一方、最愛の息子を殺害した犯人を捜すファン・スンギュを演じる、イ・ジョンウン(『私たちのブルース』『君は天国でも美しい』)の熱演にも拍手を送りたい。息子の死を嘆き悲しむだけの母親ではなく、復讐のためには非合法な手段をもいとわない命知らずの母親を演じるために、イ・ジョンウンは10kg減量し、役作りに励んだという。

 連続殺人犯の捜査にあたるキム・ジュンミョン刑事(チョン・マンシク/『ベテラン』『最悪の悪』)をはじめとした警察の対応の悪さに、イライラが募ることも付け加えたい。

 監督は、『人質 韓国トップスター誘拐事件』のピル・カムソン、脚本は、『必ず捕まえる』のキム・ミンソンと、ソン・ハンナの共作である。

『運の悪い日』韓国版ポスター (C)TVING

●作品情報

『運の悪い日』

[2023年/全10話]演出:ピル・カムソン 脚本:キム・ミンソン、ソン・ハンナ

出演:イ・ソンミン、ユ・ヨンソク、イ・ジョンウン、チョン・マンシク、ウ・ミファ、チェ・ドクムンホン・サビン、テ・ハンホ