■『ムービング』『ナインパズル』などの話題作にも出演

 映画監督の知人が多いペク・ヒョンジンは、2000年代初頭からインディーズ映画といった小規模作品に役者として出演してきた。しかし、ここ10年ほどは商業映画やドラマへの出演が急増している。

 ソン・ソックキム・ダミ主演の話題作『ナインパズル』では、謎の死を遂げた新聞記者イ・ガンヒョン役を何とも言えない不穏な雰囲気で演じている。

 ちなみに、本作で刑事キム・ハンセム役を務めるソン・ソックもまた、異質な経歴を持つ俳優として知られる。かつて、韓国軍のザイトゥーン部隊に志願し、イラク北部の都市アルビルへ派遣された経験があるほか、プロバスケットボール選手を目指したこともあったという。近年は短編映画の監督に挑戦するなど、経歴のユニークさではペク・ヒョンジンに勝るとも劣らない。

 本作で二人が直接絡むシーンはなかったが、役者という枠に収まらない二人が、同じ作品に出演しているのは何とも興味深い。

『ナインパズル』ディズニープラス スターにて独占配信中 (C)2025 Disney and its related entities

 大ヒット作『ムービング』では、ペク・ヒョンジンは物語の鍵を握る工作員チョン・サンジン役で、短い登場ながらも観る者に強烈なインパクトを与えた。ほかに『良くも、悪くも、だって母親』『HAPPINESS/ハピネス』などの話題作でも、個性を発揮している。

 彼が作り上げる役は、ひとつの顔にとどまらない。ある時は常識的な仮面の下に狂気を隠し、またある時は暴力的な振る舞いの中に孤独が見え隠れする。ペク・ヒョンジンのもとに役が集まってくるのは、彼にしかできない巧みな表現があるからだろう。

 以前、彼は自らを「音楽家兼美術家」と称していた。しかし、そこに役者が加わった近年は、自身について「音と視覚のあらゆることに携わる者」と語っている。音楽、アート、演技。何をやっても彼ならではの表現方法でその業界を席巻し、人々を魅了する。次はどんな音を奏で、何を見せてくれるのだろう。これからもペク・ヒョンジンの活躍に注目したい。

●配信情報

『ナインパズル』ディズニープラス スターにて独占配信中

[2025年/11話]演出:ユン・ジョンビン 脚本:イ・ウンミ

出演:キム・ダミ、ソン・ソック、キム・ソンギュンヒョン・ボンシク

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