「月刊ホン・サンス」と題され、昨年11月から今年の春にかけて、日本で近作5本と準近作5本が公開されているホン・サンス監督作品。そのなかの『私たちの一日』『逃げた女』『川沿いのホテル』に出演している俳優がソン・ソンミだ。 現在、ベルリン国際映画祭で招待作として上映されている監督の最新作『彼女が帰って来た日(原題訳)』では、初めて主演を務めている。

■ホン・サンス監督作品の常連俳優ソン・ソンミ、『スタートアップ:夢の扉』『ポッサム』も印象的

 ソン・ソンミといえば、韓国ドラマ『スタートアップ:夢の扉』の主人公(ペ・スジ)の身勝手な母親役や、チョン・イル主演時代劇『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』で王の寵愛を受ける尚宮役の悪女っぷりを記憶している人も多いだろう。

 ここでは、50代に入り、円熟味を増しているベテラン俳優ソン・ソンミの足跡を振り返ってみよう。

 ソン・ソンミは1974年、釜山の下町、凡川洞で生まれ、二十歳の頃、SBSドラマで俳優デビュー。その後も途切れることなくドラマに出演し続ける。

 身長172センチ、整った目鼻立ちと長い手足をもち、やや高い声。1990年代はまさに青春スターだった。筆者は彼女を見ると日本の1970年代の青春スター、檀ふみを思い出す。佇まいや役柄に共通点が多い。

 スクリーンデビューは1998年の『美術館の隣の動物園』。『八月のクリスマス』のシム・ウナイ・ソンジェの主演映画だが、ソン・ソンミは先日亡くなった国民俳優アン・ソンギとともに劇中映画の主人公を演じていた。映画のデビュー作としては破格の扱いといえる。

 20代の彼女の魅力が存分に発揮された映画が、日本では2004年に公開された『菊花の香り 世界でいちばん愛されたひと』だろう。主演はパク・ヘイルとチャン・ジニョン(故人)で、ソン・ソンミは二人の姉貴分のような役柄だった。その前後も、『マイ・ボス マイ・ヒーロー』『木浦は港だ』など話題作に出演していたが、そのバランスのよい美貌のせいか、お人形さん的な役柄が多かった印象だ。

 女優としての真価が発揮されたのは、やはりホン・サンス監督作品に出てからだろう。30本以上ある作品中8作に出演している常連中の常連だ。初出演作は2006年の映画『浜辺の女』。リゾート地で過ごすキム・スンウコ・ヒョンジョン扮する主人公と三角関係になる役で、円満な部分と情緒不安定な部分を併せもつ難しい役柄の女性を演じていた。

『浜辺の女』でソン・ソンミがキム・スンウやコ・ヒョンジョンと酒を飲むシーンが撮影された薪斗里海岸(忠清南道泰安郡)の刺身
『浜辺の女』でソン・ソンミとキム・スンウのラブシーンが撮影された薪斗里海岸