Netflix配信の話題作『サラ・キムという女』は、不可解な殺人事件から幕を開ける。ソウル警察庁のチーム長であるパク・ムギョン(イ・ジュニョク)は、被害者と推定される謎めいたサラ・キム(シン・ヘソン)の正体を追っていく。
サラは高級ブランドを現金で買い漁り、他人の富を吸い上げる得体の知れない存在だった。この幻影のような主人公をシン・ヘソンが完璧に演じ切っている。全8話だが、見ていて長く感じた。それほど中身が濃かったのだ。(以下、一部ネタバレを含みます)
■俳優は登場人物の化身になるという、強烈な真理を見る人に突きつけてくる『サラ・キムという女』
劇中に登場する高級ブランドの華やかな世界は、人々の欲望を吸い上げた虚構かもしれない。そしてまた、サラ自身も実体のない虚飾にまみれた人間だった。
もともと高級バッグ店のスタッフだった彼女は、偽物の不正転売をきっかけに、自分自身を特権階級に見せかける術を身につけた。偽物が本物を凌駕し、虚像が真実になっていく危うさを彼女は鮮烈に体現していた。
結局、彼女は実在しないブランドをでっち上げ、模造品で自らを着飾った。地下の工房で作られた偽物のバッグも、彼女の天才的な演出にかかれば、一流百貨店に並ぶ最高級品のような威光を放つ。専門家の目すら欺くほど、その偽造は精巧を極めていた。
まさに現代の錬金術だ。絶対的だと信じている価値観は、実は極めて脆いのだ。
ムギョンは彼女の仮面を剥ぎ取ろうと必死に追及を続ける。しかし、彼女の防御壁は厚く、容易には崩れない。本物と偽物の境界線は、どこまでも曖昧なままだ。高級品も人間も、見分けることは不可能に近い。虚構が現実を装う世界で、サラは己の存在を極限まで肥大化させていった。
しかし、ただ手をこまねくムギョンではない。取調室においてムギョンは捜査経験のすべてを注ぎ込んで、サラの尻尾をつかもうとする。