『映画 冬のソナタ 日本特別版』の元になった2002年のドラマ『冬のソナタ』。2000年に『秋の童話』を成功させたユン・ソクホ監督は、秋に続いて冬を描きたいという基本線を決めていた。
秋の哀愁を描き切った彼が次に見据えたのは、白銀の世界が広がる冬の情景だった。寒く厳しい季節だからこそ、人々の心を温める至高のラブロマンスが必要だと考えたユン・ソクホ監督は、次々と持ち込まれる企画書に目を通し始めた。
■『冬のソナタ』で実績のない若手脚本家を登用した采配が歴史的な大成功を収める原動力に
事態は決して順調に進まなかった。実績を十分に積んだベテラン脚本家のアイディアは、どれも既視感のあるものばかりであった。どこかで見たような設定に、ユン・ソクホ監督の心はまったく動かなかった。作品の骨格となるシナリオ選定の段階で、早くも厚い壁にぶつかってしまったのだ。
先の見えない焦燥感を抱えていると、1つの新しい企画書が届けられた。それはユン・ウンギョンとキム・ウニという、まだ無名の2人の若き女性クリエイターが作成したものだった。何気なく表紙をめくると、そこに記された1行の言葉に釘付けになった。
「……けれど、初恋が再び私を呼んだら、どうすればいいの?」
それは、読み手の心を一瞬で揺さぶる魔力を持った言葉だった。衝撃を受けたユン・ソクホ監督は、すぐさま2人を呼び寄せた。そして、彼女たちが胸に秘めたストーリーの詳細に耳を傾けた。
物語の導入は、瑞々しい高校生たちの純愛から始まる。しかし、残酷な交通事故が男性の命を奪い、永遠の別れが訪れる。ところが数年の歳月を経たのち、死んだはずの彼が忽然とヒロインの前に姿を現すのだ。
しかも、一切の過去の記憶が失われているという。数奇な運命に翻弄される展開に、ユン・ソクホ監督の心は完全に奪われてしまった。
懸念材料がなかったわけではない。テレビドラマの執筆経験が乏しい新人を抜擢することは、制作サイドにとって大きな賭けである。シナリオの破綻は、そのまま作品全体の崩壊に直結するからだ。そのような多大なリスクを背負うことへの恐れが存在した。
それでも、最終的にユン・ソクホ監督は決断した。技術的な不足や構成の甘さがあれば、演出家が全力で補い、導いていけばいい。テクニックよりも、彼女たちが持つ瑞々しく新鮮な感性を作品に注ぎ込むことのほうが、はるかに重要だと判断したのだ。
実績のない若手を登用するという大胆な采配は、結果として歴史的な大成功を収める原動力となった。こうして、新作ドラマの中心に据えるべきテーマは「永遠の初恋」に確定したのである。
次なる難題は配役だ。過ぎ去った初恋の幻影をひたむきに追い求めるヒロインには、果たして誰が適任だろうか。そして、彼女から深く愛されるミステリアスな青年の役柄を誰に託すべきか。ユン・ソクホ監督の頭の中では、人気俳優たちの顔が駆け巡っていた。