『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』のチャン・リュル監督作品『群山』では、情緒不安定な主人公(パク・ヘイル)がたびたび薬局に現れ、薬剤師(ハン・イェリ)に歯が痛いことを告げる。金を持っていないことに気づいた主人公は帰ろうとするが、薬剤師は鎮痛剤のパッケージを破って一錠を渡す。主人公は、「なぜボクを信用してくれるんですか?」と真面目な顔で聞くが、薬剤師は大らかに微笑むだけだった。
『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンと『愛の不時着』のソン・イェジンがW主演した『四月の雪』では、それぞれの配偶者の交通事故と不倫にショックを受けた主人公二人が偶然、薬局に居合わせ、それぞれ薬剤師に不眠を訴えるシーンがあった。他人どうしが共鳴する場として薬局が使われた例だ。これをきっかけに二人はたがいの事情を話し合うようになり、やがてただならぬ関係に至る。
薬局はどちらかというと肉体より心を治癒する場所として登場している印象だが、もっとも印象的だったのは、『神と共に』のキム・ヨンファ監督作品『国家代表!?』だ。寄せ集めのスキージャンプ国家代表選手がオリンピックへの夢を断たれたとき、ハ・ジョンウ扮する主人公をはじめとする選手たちがそれぞれ失意に陥る場面があった。
選手の一人フンチョル(キム・ドンウク)は服用量を超える風邪薬を飲んでハイになろうと薬局へ行くが、一軒目の薬剤師は百も承知で「ボトルでは売れません」と拒否。二軒目の薬剤師(オ・グァンロク)はフンチョルの「10錠ください」という言葉で彼の心の痛みを察したのか、苦笑いしながら言う。「ボトルごとやろうか」。薬剤師は窓の向こうの冷たい雨を見ながら、「冬の雨だな」とポツリ。
もちろん薬剤師としては適切な行為ではないのだが、『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』のドンウク同様、傷ついた者に寄り添おうとするいい場面だった。
筆者は二日酔いがひどいとき薬局に駆け込むのだが、親身に症状を聞き、薬を選んでくれる薬剤師に出逢うと心まで軽くなる気がする。
●公開情報
『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』全国公開中
[2023年/102分]監督:キム・へヨン 脚本:キム・ヘヨン、チョ・ホンジュン
出演:イ・レ、チン・ソヨン、チョン・スビン、イ・ジョンハ、ソン・ソック
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
(C)2023 TWOMEN FILM ALL RIGHTS RESERVED.