韓国映画大丈夫、大丈夫、大丈夫!』は、交通事故で母を亡くした女子高校生イニョン(イ・レ)が、貧困や孤独と向き合いながらも、完璧主義の先生(チン・ソヨン)とともに伝統舞踊に打ち込むハートフルな物語だ。

 イニョン役の女優イ・レは、ドラマ『地獄が呼んでいる』でヤン・イクジュン扮する刑事の娘、『無人島のディーバ』ではパク・ウンビン扮する主人公の子供時代を演じていたので、覚えている人も多いだろう。

 本作には、イニョンがくじけそうになると、ソン・ソックが店主に扮する薬局に立ち寄る場面がある。映画的な誇張があるとはいえ、韓国では薬局を癒しの場、駆け込み寺のように見る独特の情緒性があることを示している。

■映画『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』言葉は少ないが、傷ついた心に寄り添ってくれる薬剤師役ソン・ソックの演技に感動

『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』で、舞踊団の仲間にいじめられて凹んだイニョンが薬局に立ち寄り、店主のドンウク(ソン・ソック)と会話するシーンがある。

「これを食べた子はみんな笑うんだ。オレもたまに食べたよ」

 そう言いながらイニョンに菓子を渡すドンウク。言葉は多くないが、傷ついた者にただ静かに寄り添う様は、『犯罪都市 THE ROUNDUP』『D.P. -脱走兵追跡官-』のソン・ソックと同一人物とは思えない演技の新境地だった。

『大丈夫、大丈夫、大丈夫!』(C)2023 TWOMEN FILM ALL RIGHTS RESERVED.

 このシーンで思い出したのだが、韓国映画における薬局には単に薬を売り買いする場所以上の役割がありそうだ。

 日本ではだいぶ前から大型店舗のドラッグストアが一般的だが、韓国ではソウルのような大都市でも個人経営の小さな薬局が健在である。

 大人の純愛を描いたドラマ『ある春の夜に』では、チョン・ヘインが小さな薬局の薬剤師役で、客として店を訪れたハン・ジミン扮する図書館司書のヒロインと知り合うことから物語が始まる。ホームドラマ『ソル薬局の息子たち』はタイトルにあるように、ソウルの小さな薬局が舞台になっている。

■薬局が登場する韓国映画『マイ・スイート・ハニー』『国家代表!?』『四月の雪

 ほかにも、個人経営の薬局が登場する映画をいくつか紹介しよう。

ワンドゥギ』や『無垢なる証人』のイ・ハン監督作品『マイ・スイート・ハニー』では主人公(ユ・ヘジン)が片思いの苦しさに耐え切れず薬局に飛び込み、薬剤師(ヨム・ヘラン)に訴えるシーンがあった。

 主人公「心臓がドキドキするんです」

 薬剤師「心臓って元々そういうものですよ」

 コミカルなやりとりだが、韓国では片思いを相思病(サンサピョン)と言うくらいなので、薬局に駆け込む気持ちもわからないではない。