■『21世紀の大君夫人』で描かれた「つるし花火」は慶尚南道・咸安の伝統行事「落火ノリ」
『21世紀の大君夫人』には、王室で行われる伝統行事が登場する。夏を迎えるにあたり、歴代王と王妃の位牌を祀る宗廟で行われる「夏享大祭」という祭祀、内輪の親睦会である「内進宴」、そして幼王の誕生日を祝い、願い事を書いた短冊を燃やす「つるし花火」だ。
「つるし花火」の撮影が行われたのは、韓国南東部にある慶尚南道・咸安(ハマン)である。
咸安は1世紀から6世紀半ばまで韓国中南部に存在した伽耶(カヤ)という複数小国連盟のうちのひとつ、阿羅伽耶があった場所で、当時の王や王族たちが眠る咸安末伊山古墳群はユネスコ世界文化遺産に登録されている。
また、咸安山城の発掘調査の際に発見された蓮の種が、700年前の高麗時代のものと判明。その種付けに成功し甦った蓮の花は咸安博物館の前庭に咲いている。
そんな咸安で、朝鮮王朝時代に着任した郡守が郡民の安寧と豊作を祈願し始めたといわれているのが「咸安落火ノリ」という火祭りである。近代になり、本祭りの保存会により咸安の無尽亭(ムジンジョン)で毎年旧暦の釈迦誕生日に開催されている。
村の周辺に多く生息するオークの木炭粉を韓紙と布で巻いて落火棒を作る。池に張り巡らしたチェーンに等間隔に落火棒を吊るし、その先端に願い事を書いた短冊を吊り下げ点火していく。私はこの行事に2回参加したが、線香花火のようにほのかに燃えている火が、チェーンが風にあおられると一気に勢いよく燃え上がる様は、とても神秘的かつ幻想的で、深い感動を覚える。
『21世紀の大君夫人』では、イ・アン大君が「つるし花火」の炎の向こうに立つ真っ赤なスーツ姿のヒジュを見つけ、高校時代に弓道場でヒジュと出会ったことを思い出す場面が、とても印象的に描かれている。
●咸安郡へのアクセス
釜山西部バスターミナル(沙上)から咸安バスターミナルまで約55分。