■エプスタイン事件の「顧客リスト」が遂に公開!?

Epstein and Clinton

エプスタインとの密接交際が明らかになったビル・クリントン元アメリカ大統領.

 

画像:X posted by @simonatabe

 2024年1月3日(日本時間1月4日)、遂に全世界を震撼させる「裁判資料」が公開された。2019年8月、真相を知る、あるいは“知り過ぎた”容疑者の不可解な自殺という、衝撃的な結末を迎えた「エプスタイン事件」に関わるものだ。

 

 カリブ海・米領ヴァージン諸島のリトル・セント・ジェームズ島で長年にわたり行なわれた醜悪極まる犯罪。首謀者とされたジェフリー・エドワード・エプスタインが個人所有するその島で、ローティーンの少女をはじめ多くの女性に性的虐待、さらには人身売買まで働いた者のなかには、世界中の大富豪や元大統領、王族などのセレブリティが数多く含まれていたという。

 

 今回、公開された裁判資料には、ここで行なわれた醜悪な犯罪に加わった、あるいは積極的に協力した堕ちたセレブたちの名が連なっているという。一部では「遂にエプスタイン島の顧客リストが公開!」などとセンセーショナルな見出しが躍っており、裁判資料を公開していたサイト(注1)は一時サーバーダウンを起こすほど注目された。

注1/NPO団体Courtlistenerによるもの。リンクはhttps://www.courtlistener.com/docket/4355835/giuffre-v-maxwell/?page=8

 

 特に、裁判資料に名前の挙がったビル・クリントン元・米大統領、イギリス王家のアンドリュー王子らは「すぐにも証人喚問されるのでは?」と噂が飛び交い、ビル・ゲイツらその他のセレブたちも、エプスタインとの関係否定に躍起になっている。まさに、欧米の上級国民たちは、もはやパニック状態のようだ。

 

 すでに事件が発覚してからすでに3年半の時が過ぎたいまも、まだ数々の謎が残るこの事件。まずは、不可解な死を遂げたエプスタインと事件の概要、そして、この怪人物を生み出した4人の男と1人の女についてみていこう。

 

 

■謎の投資家・エプスタインとは何者か?

Epstein 2013

2013年、未成年女性への性的虐待で起訴されたエプスタイン。だが、余裕の笑みを見せる裏には……。

画像:Public Domain via Wikimedia Commons

 ニューヨークの高級住宅街、アッパーイーストサイドでもひと際目立つ9階建ての大邸宅で、「最低でも10億ドル以上の資産」をもった億万長者だけを顧客にする」と高言し、資産管理や投資アドバイザーとして自らも莫大な財産と華やかな人脈を築いた投資家とされるエプスタイン。

 

 しかし、ほとんど表には出ず、投資や証券の業界でも彼の名を知る人は少なかったという。エプスタインと同じく資産家を相手にする投資マネージャーからも、

「あれほど大きな獣が足跡を残さないのはあり得ない」

 と首を傾げられるほど、彼の投資の手口は謎が多かったという。さらに、なぜ、そこまでの地位と巨額の富と人脈を築けたのかも不可解な点が多い謎の人物だ。

 

 20年近くにわたり彼を取材してきたジャーナリスト、ヴィッキー・ワードが事件発覚前、エプスタインが絶頂期だった2003年に公開した記事(注2)などによれば、エプスタインは1953年1月20日、NY・ブルックリンに暮らす中流家庭に生まれた。

注2/「The Talented Mr. Epsutein」Vanity Fair 2003年3月1日公開記事。なお記事の原題はパトリシア・ハイスミスの傑作サイコスリラー『太陽がいっぱい(The Talented Mr. Ripley)』をもじったもの。その辺にワードの皮肉や警告が見て取れる。

 

 市役所に勤めるユダヤ系の父は教育熱心で、幼い頃からピアノを学ばせたりしていたという。その後、地元の公立高校・ラファイエット高校を2年飛び級で卒業。数学に特異な才能を発揮し、ニューヨーク大学クーラント数理科学研究所で研究者の道に進むが、何らかの理由で中退。セレブの子弟が通う私立の名門高・ドルトンスクールで物理と数学を教える教職に就く。