■遺体の場所も死因も不明…謎の事故物件
通常、事故物件となってしまった部屋には、「瑕疵(かし/※土地や建物に何らかの欠陥があること)の告知義務」が発生する。そして、その部屋にどんな問題があるのか、貸主や不動産業者は入居者に説明しなければならない。
どこまで詳細に伝えるかは不動産業者に判断が委ねられているものの、たいていは亡くなった場所(部屋)や死因くらいなら教えてもらえる。しかし……、
「今回の物件は、何もかも不明なんですよ……。死因はおろか、亡くなった場所も分からない。不動産屋さんも、『遺体が発見された日付しか分からない』って……。人が死んでいるのは確かだから、事故物件扱い。でも、どこにご遺体があったか分からないなんて、そんなことありえるのでしょうか」
現場の管理を任されている不動産屋ならば、遺体が見つかった箇所くらいは把握しているはずだ。いったい、どういうことなのだろうか?
■淡々と謎解きをするCocoさん…心臓強し!
「死因が分からないのは、おそらく腐敗していたからだと思います。発見場所が分からないのは……もしかしたら、バラバラ殺人が起こって、ご遺体があちこちに散乱していたからではと考えました。でも、それなら『殺人』って言われますよね」
さらに、Cocoさんは首を傾げながらこう続ける──。
「何かが原因で亡くなり、死体をペットが食べ散らかしてしまった。だから亡くなった場所が分からない、というセンも考えられます」
不動産屋が本当に知らないだけなのか。はたまたCocoさんが考えるように、バラバラになってあちこちの部屋に散ってしまったから、あえて隠しているのか……。
後日、筆者が知り合いの事故物件専門の不動産業者にこの話をしたところ、
「じつは物件内が床が埋まるほどのゴミ屋敷になっていて、ゴミの上で亡くなってしまったのではないか。だから腐敗しても体液が床に零れず、“部屋のゴミの上で死んだ”から、亡くなった場所が分からないという表現になったのでは……?」
と考察してくれた。いずれにせよ、真相は闇の中だ。そして、この不動産業者による「事故物件ゴミ屋敷説」をCocoさんに伝えるとこう返ってきた。
「でも事故物件はかまわないんですけど、元ゴミ屋敷は嫌ですね……」
(えっ、そっち?)とツボに入ってしまったが、怪談愛あふれるCocoさんらしいコメントだった。
■Cocoさんが「京都の怪異」にこだわる理由
さらにCocoさんは「事故物件」という概念そのものにも、じつは怖い裏話がある語る。
「何年か前に、事故物件に関するガイドラインが変わりました。その影響で、“病死かつ特殊清掃が入らなければ、事故物件にはならない”と解釈する不動産屋も増えているんです。ガイドラインによれば、特殊清掃が入っても3年経てば事故物件から外れるそうで。もしかしたら読者の皆さんが住んでいる物件も、元は事故物件かもしれませんね……」
最後の最後に、聞いているこちらの背筋がゾクッとする話を聞かせてくれたCocoさん。ただ、残念ながら(?)、今のところ、新居でも怪奇現象は起こっていないらしい。
ところで、全国でお化け屋敷をプロデュースし、各地の心霊スポットを巡ってきた彼女が、今も「京都の」事故物件に暮らし、京都を拠点に活動するのはなぜなのだろう。
「京都は歴史ある心霊スポットが多いんですよ。それが観光地に密接しているのも魅力のひとつですね。じつは京都って、大阪や東京に比べると怪談系のイベントが極端に少ないんです。お化けや怪異が身近すぎるのかな(笑)。今後は若い人にもイベントに来てもらえるように、京都の怪談界隈を盛り上げていきたいです」
異界都市・京都のホラー界隈をけん引するCocoさん。電脳奇談では今後も彼女の協力を仰ぎながら、京都に点在する心霊スポットの謎を追っていきたい。
『日本歴史地名大系』JapanKnowledge参照