■『二十五、二十一』の名セリフ、ナ・ヒドとべク・イジンが本当に言いたかったこと

『二十五、二十一』はナム・ジュヒョクとキム・テリの主役コンビを中心に、名セリフに彩られたストーリー、毎回終盤を飾る劇的な場面……どれを見ても素晴らしい出来ばえだった。さらには、色彩と光と暗闇が芸術的すぎて、映像が頭から離れなかった。

 それにしても、キム・テリは「演技に魅せられた天使のような女優」だった。台本に書かれていない感情を自分で想像して創造的に演じきっていた。彼女のように年齢を自在に変えられる女優を初めて見た。

 ナム・ジュヒョクはいつもトキメキに満ちた俳優だった。表情の一つひとつに恥じらいと哀愁がある。同時に、芯の強さも感じられた。何よりも、彼の感情表現には好感が持てる抒情性があった。

 そして、ラストシーン。今までの映画・ドラマで感激したのは、映画『卒業』の花嫁強奪、映画『スティング』のどんでん返し、映画『ニューシネマパラダイス』のキスシーン、ドラマ『冬のソナタ』の再会……果たして、『二十五、二十一』は?

 心配無用で、脚本家に対する信頼が大きかった。最後の場面になれば、かならず視聴者を別世界に導いてくれると思っていたら、案の定だった。ナ・ヒドとペク・イジンが本当に言いたかったことをクライマックスで出してくれてドラマは見事に完結した。これで何度でも繰り返し見られることが嬉しいし、終わり方は最高だった。

 こうして、人生で長く愛してきた多くの映画やドラマを、1本の作品が一気に乗り越えていった。最初から最後まで物語の真髄を見せてくれた脚本、名場面の宝庫を作り出した演出、ときめきに満ちた魅惑的な俳優、心を震わせる音楽……すべてが揃った『二十五、二十一』に出会ったことを心から感謝したい。

『二十五、二十一』画像:tvN