■『殺人の追憶』ポン・ジュノ監督(2003年)
『シュリ』『反則王』『JSA』ではスッキリ美男風だったソン・ガンホだが、本作では80年代の脂っこい田舎刑事を演じた。ソウルからやってきた知性派の刑事(キム・サンギョン)や、目もと涼し気な容疑者(パク・ヘイル)との対比で、ソン・ガンホの濃厚で多彩な顔芸が堪能できる。
本当に恐ろしいのは殺人鬼を生み出した世の中ではないのか。そんな風に感じさせるラストシーンの顔のアップが今も脳裏に焼き付いている。
■『グエムル-漢江の怪物-』ポン・ジュノ監督(2006年)
居眠りばかりしていて寝癖の付いた金髪。だらしないジャージ姿。売り物のスルメをつまみ食いする単細胞。ソン・ガンホのダメ男演技は説得力抜群だった。
見どころは娘をさらって行った怪物との戦いを通して父性を回復してゆく姿だ。ラストシーンでは完全に父親になった男の顔にグッとくる。