ソン・ガンホがカンヌ国際映画祭で主演男優賞を獲った『ベイビー・ブローカー』(是枝裕和監督)の公開を待ち侘びながら、彼の主演作を見直している。

 ソン・ガンホは1967年1月17日生まれ。演劇活動を経て、1996年に映画デビューした。ここでは、2回に分けて、ソン・ガンホの名演技が堪能できる韓国映画を10本紹介しよう。※カッコの年号は韓国公開年

■『反則王』キム・ジウン監督(2000年)

 ソン・ガンホの初主演作。物語をひとことで言うならプロレス版『Shall we ダンス?』(1996年、周防正行監督)だ。33歳のスリムなソン・ガンホに会える。

 ぼんくら銀行員がパワハラ上司に復讐するためにプロレス道場に入門するというコミカルな設定で、たっぷり笑わせてくれるのだが、当時のソン・ガンホが意外と美男でドキッとする。

 コーナーポストからバック転で飛んでリングに着地するというアクションも本人がやってのけた。本職のプロレスラーでもできる者は限られる離れ業だ。DVDには特典映像としてプロレスの厳しいトレーニング風景が収められていて、彼が大変な努力家であることがよくわかる。

 終盤は覆面レスラーとなって戦うため得意の顔芸が見せられないにも関わらず、アクションだけで笑わせ、唸らせる表現力はさすがと言うほかはない。

 ♪思い切りふくらませた風船ガム 高く高く飛んでゆけ

 エンドロールとともに流れる「風船ガム」の歌詞は、その後20年以上続くソン・ガンホの黄金時代を予見するかのようだ。