「静」の母(キム・ヘジャ)に対する「動」の息子の演技で、ともすれば散漫になりかねないオムニバス形式の韓国ドラマ私たちのブルース』のラストを見事に飾った名優イ・ビョンホン。最終回は本作の最高視聴率14.59%を記録し、ドラマのヒットに大きく貢献した。

 都会的なエリートを多く演じてきたイ・ビョンホンが、本作では済州の気性の激しい行商人という意外性のある役で、あらためて彼の演技力が注目されている。

 今回は40作近い映画出演歴のなかでも、特にイ・ビョンホンらしさが光る作品を5つ振り返ってみる。

チョン・ドヨンとの共演作『我が心のオルガン』(1999年)

 都会から田舎の学校に赴任してきた新米教師役のイ・ビョンホンが初々しいが、映画デビューは1995年なので、本作がすでに9本目だ。1970年生まれのイ・ビョンホンは当時29歳。相手役は1973年生まれのチョン・ドヨン、当時26歳。今では実現が難しい組み合わせといえる。
 見どころは恋焦がれる女教師(イ・ミヨン、当時28歳)とのからみ。タイトルにも入っている「オルガン」のシーンは笑いを禁じ得ない。それにしてもイ・ミヨンの美しいこと。当時すでに俳優キム・スンウと結婚していたが、本作公開の翌年に離婚している。

ソン・ガンホと兄弟分を演じた『JSA』(2000年)

 前年公開の『我が心のオルガン』同様、兄貴分役のソン・ガンホ(当時33歳)とのコントラストでイ・ビョンホンの若々しさが際立つ。映画の前半、弟分役のキム・テウやシン・ハギュンとのからみの明の演技と、後半、ソフィ(イ・ヨンエ)の取り調べを受けるときの暗の演技の落差が見もの。

映画『JSA』のヒットで板門店ツアーも人気に。写真左端の緑の軍服はイ・ビョンホンではなく、本物の韓国兵士。右端の迷彩服は米軍兵士
映画『JSA』の板門店シーンはセットで撮影された。こちらは本物の板門店(南側から撮影)
板門店の会議場の中。中央はキム・テウではなく本物の韓国兵士