■殺し屋役で肉体美も抜群の『グッド・バッド・ウィアード』(2008年)
原題『좋은 놈, 나쁜 놈, 이상한 놈』の直訳は『いい奴、悪い奴、変な奴』。泥棒役のソン・ガンホ(変な奴)、善玉の賞金稼ぎ役のチョン・ウソン(いい奴)に対し、イ・ビョンホンは馬賊の頭目(悪い奴)役。血に飢えた殺し屋がぴったりハマった。仇敵に切り落とされた指を覆う義指が風を受けて鳴くというマンガチックな演出も、イ・ビョンホンの存在感のせいで違和感がなかった。肉体美を誇示するサービスショットも多く、ファンにはたまらない。
本作公開の年とその前年、筆者は映画のモチーフになっている「15万元強奪事件」の現場(吉林省延辺朝鮮族自治区の龍井)を取材していたので、とくに印象に残っている。
■殺人鬼vs復讐鬼の闘いが壮絶な『悪魔を見た』(2010年)
殺人鬼(チェ・ミンシク)vs復讐鬼(イ・ビョンホン)というわかりやすい対立構造の映画。復讐鬼に感情移入せざるをえず、観ていると消耗させられるが、この二人にしかできない難しい役柄だ。
ショッキングなシーンの連続なので、本作を観たあとは、『私たちのブルース』のドンソクの行商のセリフ「♪ペンチ~ マンチ~ ドライバ~ コングイルチェ~」で口直しすることをおすすめする。
■大統領暗殺をモチーフとした『KCIA 南山の部長たち』(2020年)
長期政権維持のため心が千々に乱れる朴正煕大統領(イ・ソンミン)と魑魅魍魎の配下たちとの間に挟まれ、苦悩する側近を演じたイ・ビョンホン。同じく朴正煕大統領暗殺をモチーフとした映画『ユゴ 大統領有故』や『大統領の理髪師』と比べると心理描写がじつに綿密。50代に突入したイ・ビョンホンにふさわしい役どころだった。