カンヌ国際映画祭で注目された是枝裕和監督作品『ベイビー・ブローカー』は、最優秀男優賞を受賞したソン・ガンホだけでなく、弟分を演じたカン・ドンウォンや彼らといっしょに旅をしたイ・ジウンIU)の演技もすばらしかった。

 今回はカン・ドンウォン(1981年、釜山生まれ)の出演作のなかから、筆者が強くおすすめしたい韓国映画2作品『彼女を信じないでください』『義兄弟 SECRET REUNION』を通して、彼の演技の魅力を探ってみたい。

■カン・ドンウォン初主演映画『彼女を信じないでください』(2004年)

 2000年に路上でスカウトされモデルになったカン・ドンウォンの映画デビュー作にして初主演作。仮釈放されたばかりの前科者(キム・ハヌル)と、ひょんなことから田舎の実家で同居することになった純情青年(カン・ドンウォン)の物語だ。

 この十数年、スピード感、テンポ、撮影技術、社会性などの面で総合点の高い韓国映画を見慣れた人には、きわめてぬるい映画に見えるかもしれない。しかし、筆者はこういう映画にこそ我が国らしさを感じるので、公開年にDVDを買って以来、何度リピートしたかわからない。

 キュートだが、ずるがしこい前科者と保守的な家族との板挟みで苦悩するカン・ドンウォンがひたすら可愛らしい。地方出身者らしい一直線な向上心しかもたなかった青年は、前科者と関わるなかで寛容さを身につけるようになる。同時に前科者も青年の純朴さに心打たれ、良心に目覚めてゆく。このあたりが見どころである。

 青年の父親役のソン・ジェホ、祖母役のキム・ジヨン(82年生まれではなく37年生まれ)の演技がひたすらあたたかくて涙を禁じ得ない。この二人はすでに鬼籍に入っている。

『彼女を信じないでください』で、青年(カン・ドンウォン)と前科者(キム・ハヌル)が出会ったのはムグンファ号の対面座席だった