■北朝鮮から来た人々の目に映るソウルの街の風景

『ペーパー・ハウス・コリア』の冒頭、北朝鮮出身者の目に映るソウルは光と影のコントラストが強く、興味深い。またそのロケ地選びにもこだわりが感じられるとチョン・ウンスク氏は語る。

「動画配信サービスで古今東西の名画や新作ドラマが見放題の昨今、第1話のインパクトで視聴者のハートをつかむのは容易ではありませんが、本作はその点で抜きん出ています。1話の冒頭6分間だけでもかなり見応えがあります。

 韓国の映画やドラマは歴史の『if』を作り出すのが得意です。チャン・ドンゴンと仲村トオルの主演映画『ロストメモリーズ』(2002年)では、日本植民地時代が1945年以降も続いた2009年のソウルが描かれました。現実には李舜臣像が建っている光化門前に豊臣秀吉像が建っている映像は、絵空事とはいえ大変ショッキングでした。また、『二重スパイ』(2003年)では平壌の金日成広場での軍事パレードを最初は引きで撮っていて、そこから行進する軍人にクローズアップするとハン・ソッキュ(北の工作員役)が映るという場面にもドキッとさせられました。

『ペーパー・ハウス・コリア』では、北から南に渡ったトーキョー(チョン・ジョンソ)にソウルの経済発展を見せつける場所として、旧・京城駅前の高架遊歩道『ソウル路7017』が使われていました。コロナ禍以前にここを歩いた日本の旅行者も多いのではないでしょうか。

 ソウルの経済発展を象徴するビジュアルは、何年か前なら江南エリア(漢江の南側)が選ばれていたはずですが、あえて江北エリアを使うところにセンスを感じました」(チョン・ウンスク氏)

 Netflixシリーズ『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』は現在6話まで、Netflixで独占配信中。2022年下半期に続く6話が配信される。

1話の冒頭、ソウルに来たばかりのトーキョー(チョン・ジョンソ)が歩いた夜の「ソウル路7017」