キャラクターも、気安く人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。愛想がなく、協調性もない。しかし、シム・ウンソクは他人に同調するつもりはない。自分が信念を持っていることは、「正義に基づいて未成年を裁くこと」だけである。
仕事ぶりも尋常ではない。寝る間も惜しんで膨大な資料を読み込んで、判事として最善を尽くす。そして、自分が正しいと思ったら、上司がなんと言おうと信念を曲げない。そんな判事をキム・ヘスが冷静に演じている。
その隣席で左陪席判事を務めているのが、キム・ムヨルが演じるチャ・テジュである。
彼は、人間の付き合い方としてシム・ウンソクが持っていないものを備えている。それは、「柔らかさ」と「優しさ」である。当初、チャ・テジュはシム・ウンソクがあまりに閉鎖的な人間関係の中に入り込んでいることに戸惑い、心を痛めていた。
しかし、彼女の超人的な仕事ぶりと原則を重んじる行動に理解を示すようになる。そういう意味で、ドラマ的に言えば、チャ・テジュの存在そのものがシム・ウンソクの代弁者である。彼によって、シム・ウンソクが持つ正義感は形をともなってくる。いわば、チャ・テジュは特異なキャラクターの表現を補う最適なパートナーでもある。
しかし、強い反対勢力もいる。それが、上司となる部長判事のカン・ウォンジュンだ。イ・ソンミンが演じている。
カン・ウォンジュンは、出世に対する野望が強い。テレビ出演を積極的にこなし、世間へのアピールを優先するような男だ。必然的にシム・ウンソクと衝突する。
そんな場面での、キム・ヘスとイ・ソンミンの緊張感ある演技対決が本当に見ものだ。同じく判事でありながら、「原則」と「欲望」はこのように衝突するのか、とドラマ的に感心してしまう。
『未成年裁判』は、未成年の特異な事件を裁く判事たちの個性がぶつかりあうドラマ。脚本と演出の完成度も見事だ。
全10話で、Netflixで配信中。シム・ウンソクという「迎合しないプロフェッショナル」に意外と感情移入できることが快感になってくる。
