■1996年にダウンタウンが歌った「オジャパメン」の原曲も登場

 後半、ドンウクが蚕室大橋(オリンピック大橋の開通は1989年)を疾走するときにかかった歌は、日本でも聞き覚えのある人が多いだろう。1987年に大ヒットした 「消防車(ソバンチャ)」の「オジェパメ イヤギ(昨日の話)」である。

 そう、日本ではお笑いコンビ、ダウンタウンが「オジャパメン」のタイトルで、韓国語を聴こえるがままに歌ったあの曲だ。当時、日本の人に韓国語は呪文にしか聞こえなかったはずだが、いまどきの韓国語学習者ならたやすく聴き取れるだろう。

 ちなみに、蚕室大橋を北から南に渡り、漢江沿いの通りを左に行くと我が街、千戸洞。右に行くとオリンピックのメインスタジアムであり、いま日本で話題の合同結婚式の会場にもなった蚕室総合運動場だ。

地上555メートルの高層ビル、ロッテワールドタワーから見下ろした蚕室大橋(右端)。川向こうが江北、手前が江南。写真左上に蚕室総合運動場が見える

■羅城とコプテギ

 終盤のドンウクのセリフに、「羅城(ナソン)に行く前にコプテギをアップグレードしないとな」があった。

 羅城はロスアンゼルスのことだ。国語(韓国語)が尊重された70年代は無闇に英語を使うことをはばかる風潮があったので、ロスアンゼルスでもLA(エルエイ)でもなく、羅城という言葉が使われていたのだ。1978年に大ヒットした「羅城へ行ったら」という曲は韓国人なら誰でも知っている。2014年の映画『怪しい彼女』では、主演のシム・ウンギョンがこれを楽しげに歌うシーンがあった。

 一方、コプテギは皮のことだ。焼肉店でテジコプテギ(豚皮)を食べことがある人も少なくないだろう。この場合、皮は表面、見た目のことを指している。つまり、おしゃれのことである。地方に行くと「コプテギの店」と看板に書いてあって、いったい何の店かと思ったら、スマホのカバーの専門店だったりする。

『ソウル・バイブス』は夏バテを吹き飛ばすつもりでビールやコーラを飲みながら鑑賞するのに打ってつけの作品だ。また、『バーニング劇場版』のユ・アインを観て、もやもやが晴れない人にもおすすめである。本作で身体を絞りに絞ったユ・アインの演技は一服の清涼剤だ。

この映画でちらちら出てくるハゲの独裁者はもちろん、全斗煥(チョンドゥファン、写真左端)のこと

Netflix映画『ソウル・バイブス』予告編