■善玉のパク・ヘスが新鮮!

 Netflix韓国ドラマナルコの神』(全6話)は、ノワールに分類される物語なので多少のどぎつさはあるが、たとえばチョン・ウソン主演映画『アシュラ』やチョ・インソン主演映画『ザ・キング』、イ・ビョンホン主演映画『インサイダーズ 内部者たち』などと比べればカラッとしているので、観やすいはず。最終回の後味も悪くない。

 主人公カン・イング(ハ・ジョンウ)と麻薬王役のチョン・ヨファン(ファン・ジョンミン)の事実上のW主演といえる豪華キャストだが、筆者の印象に残ったのはチェ・チャンホを演じたパク・ヘスだ。

イカゲーム』や『ペーパー・ハウス・コリア 統一通貨を狙え』での悪役イメージが鮮烈だったので、『ナルコの神』2話で国家情報要員として登場したときは、「えっ!」と思ってしまった。しかし、任務に忠実かつ人間味もあるキャラクターが意外なハマり役だった。まだ40歳なのでこれからさらに味が出てきそうな俳優だ。ドラマだけでなくスクリーンでの彼をもっと観てみたい。

チキンはごちそうだった

『ナルコの神』の主人公イング(ハ・ジョンウ)が筆者(1967年生まれ)とほぼ同世代なので、1話の冒頭20分に登場した70~90年代を感じさせる事象はとても興味深かった。

 そのひとつが、イングが勤め帰りに買ったチキンだ。

トンタク(통닭)」と書かれたビニール袋を片手に帰宅したイングが居間の引き戸を開けると、妻(チュ・ジャヒョン)が娘に哺乳瓶でミルクをあげていた。それを見て安らかにほほ笑むイング。なんでもないシーンだが、家族のために身を粉にして働くイングの心境を察すると涙がこぼれそうになる。

店先で鶏を揚げる昔ながらのチキン屋