■ハン・ソッキュ&チェ・ミンシク
1994年に大ヒットし、延長に延長を重ねた連続ドラマ『ソウルの月(서울의 달)』は、タルトンネを舞台とした下町人情悲喜劇だ。地方から上京してきた幼なじみをハン・ソッキュとチェ・ミンシクが演じている。貧しさゆえ裏社会に片足を突っ込んでしまったハン・ソッキュと清貧を貫くチェ・ミンシクのコントラストが鮮明だ。ヒロインは1990年代を代表する美人女優、チェ・シラ。今のキラキラ韓国ドラマからは遠い人情劇の王道である。Netflixドラマ『私たちのブルース』が好きな人ならハマるだろう。
本作は脇を固める俳優陣も豪華だ。2人の下宿の大家夫妻をイ・テグンとナ・ムニ、同じ下宿にいる遊び人をハ・ジョンウの実父キム・ヨンゴン、ご近所さんをキム・ヘスクが演じている。
なお、ハン・ソッキュとチェ・ミンシクの2人は、この5年後、映画『シュリ』で南北に分かれ、銃を向け合う仇同士を演じている。
本作は30年近く前の作品なのでDVD化はされていないが、「서울의 달」で検索すれば動画が見つかるかもしれない。今やベテランの域に達した2大俳優の初々しい演技を確認してもらいたい。
■ソン・ガンホ&カン・ドンウォン
ソン・ガンホとカン・ドンウォンのコンビは、『ベイビー・ブローカー』以前の2010年の映画『義兄弟 SECRET REUNION』で実現している。ソン・ガンホが韓国側の工作員、カン・ドンウォンが北朝鮮側の工作員を演じたのだが、たがいに正体を隠しながら同居するという設定がおもしろかった。
2人は常に緊張状態にあるのだが、日常的な共通体験を積み重ねることによってしだいにイデオロギーを越えて心を通わせ始める。とくに2人が住む部屋で行われた祭祀のシーンは涙が止まらなかった。
(後編に続く)