映画でもドラマでもバディものと呼ばれるジャンルが好きだ。2者の対比によって人間の弱さや可笑しさが鮮明になるからだ。バディとは相棒のこと。バディものとは、上司部下、先輩後輩、友人同士など2人組が主人公の物語のことで、男2人の場合が多い。

 Netflix韓国ドラマD.P. -脱走兵追跡官-』は「兵役」をテーマとした重いドラマだったが、先輩後輩を演じたク・ギョファンチョン・ヘインの人間味あふれるバディものでもあった。作品は高い評価を受け、シーズン2の制作も進んでいると聞く。

 そこで今回は、1980年代から2010年までの映画やドラマに登場した魅力的なバディ、ベスト3を選んでみよう。

軍部隊の多い江原道のバスターミナルで出会った若い軍人と雑談する筆者(右)

◼️アン・ソンギパク・チュンフン

 この時代に限らず、歴代のベストバディはアン・ソンギ&パク・チュンフンで決まりである。その証拠に、この2人は1988年から2006年にかけてバディものと呼べる映画で3度もコンビを組んでいる。

 最初の作品はソウルオリンピックが開催された1988年の映画『チルスとマンス』。今のキラキラした韓国ドラマや映画に物足りなさを感じているオールドファンに愛されている名作だ。30代のアン・ソンギと20代のパク・チュンフンが演じたのは看板描きの先輩後輩コンビ。2人が屋台で飲むシーンや自転車で南山を下るシーンは清貧の輝きに満ちていた。この作品は韓国映像資料院のYouTubeで視聴できる。

ソウル南山の循環道路から南方向を望む。『チルスとマンス』でアン・ソンギとパク・チュンフンの名コンビが自転車で走り抜けた通りだ
『チルスとマンス』でアン・ソンギとパク・チュンフンが屋上の広告看板を描いたビルは、江南の高速バスターミナルの近くに実在するチョンロク会館

 2作目は1993年の映画『トゥ・カップス』。不良刑事をアン・ソンギが、転任してきたまじめな刑事をパク・チュンフンが演じているが、物語の途中から立場が逆転していくところがおもしろい。

 3作目は2006年の映画『ラジオスター』。落ちぶれた元レコード大賞歌手をパク・チュフンが、そのマネージャーをアン・ソンギが演じている。トラブルでソウルの仕事を干された2人は田舎の放送局でラジオ番組を担当させられる。やる気が空回りするマネージャーと自暴自棄の歌手の新番組は鳴かず飛ばずだが、地元の人々と心通わせていくうちに、番組と田舎町はしだいに熱を帯びていく。その過程で2人がくっついたり離れたりする描写が見ものだ。