ーーソ・ガンジュンさん扮する人気歌手ガンとイ・グァンスさん扮するマネージャー、サンフンは恋愛ではないものの、固い絆を見せてくれます。契約満了を控えるガンを、より大きな事務所に送り出すべきではと悩むサンフンの姿が、クァク・ジェヨン監督の代表作である『猟奇的な彼女』の男性主人公と重なり、まるでオマージュのようでした。
実は私が脚本に加わる前からあったシーンなんです。『猟奇的な彼女』のあのシーンは、韓国では映画『Be with You いま、会いにゆきます』など、多くの作品の中でオマージュが登場してきました。今回は私自身が自分の映画の中で使ったということですね。
難しかったのは、あのシーンを悲しく演出するのか、おもしろくするのかという点でした。『猟奇的な彼女』を思い出して笑ったらいいのか、サンフンの気持ちを感じて悲しんだらいいのかと、見ている観客にとっても、二つの感情が衝突する場面です。最終的には現場での感情に忠実に演出しようと思い、イ・グァンスさんの涙が見えるか見えないかというギリギリのところをとらえるようにカメラを動かしました。このシーンが悲しく見えるか、笑えるかについては観客のみなさんに任せようと思います。
ーークァク監督の作品からは、作中の人物たちに対する温かい視線が感じられます。映画を作るに際して、大切にしているのはどんなところですか。
私自身がとても温かい人物なので……(笑)。今回の作品でいえば、俳優たちに純粋な愛を演じてほしいとお願いしました。男女の愛というと、どうしても性的な描写がつきものになりますけれど、私の映画では心で人を愛する姿を描きたいと思いました。特に、サンギュとキャサリン役のチョン・ジニョンさんとイ・ヘヨンさんに対しては、若い頃を思い出しながら演じてほしいとお願いしました。
ーー『ハッピーニューイヤー』では、年末から新年にかけての数日間に起きたできごとが描かれます。韓国では旧正月も祝われますが、新暦の年越しにはどんな意味があるのでしょうか。
旧暦が家族と迎える新年だとすれば、新暦は、友人や愛する人と迎えるお祭りのような雰囲気が強いですね。新年を迎えるというのは、ある意味、怖い部分もありますし、その年に起きて解決してないことも解決し、悩みをなくて新年を迎えたいという人も多いでしょう。
また、人生においては、一緒に悩んでくれる人、気遣ってくれる人、対話できる人を見つけることが何にも勝る幸せです。悩みを解決し、愛する人を見つけ、新しい希望にあふれる新年を迎えてほしいという思いで作りました。
●クァク・ジェヨン監督プロフィール
1959年生まれ。ハリウッドでもリメイクされた『猟奇的な彼女』(2001年)の大成功以降、『ラブストーリー』(2003年)、『僕の彼女を紹介します』(2004年)などの作品を発表。『僕の彼女はサイボーグ』(2008年)、『風の色』(2018年)といった日本映画も手がけている。
●映画『ハッピーニューイヤー』ストーリー
高級ホテル〈エムロス〉は、クリスマスと新年を祝うホリデームードに満ち溢れていた。 15年間も男友達への告白をためらっているホテルのマネージャー。 イケメンで優秀、だけどちょっぴりクセのあるCEO。 公務員試験に落ち続け、恋人にもフラれた就活生。 新米ハウスキーパーとして働く、夢破れたミュージカル女優。 下積みを経てついにスターの座へ登り詰めた、人気アーティスト。 仕事で出会い、超スピード婚へと突き進むラジオプロデューサーとピアニスト。 毎週土曜日、ホテルのラウンジでお見合いをする整形外科医。 初恋の相手と40年ぶりに再会したドアマン。 友人たちの告白チャレンジゲームに巻き込まれた高校生カップル。 数時間後に“ニューイヤー”が迫るなか、次から次へと舞い込んでくるドタバタ&ドキドキの数々。 果たして彼らのロマンスは“ハッピー”な来年を迎えられるのか!?
●映画公開情報
映画『ハッピーニューイヤー』12月9日より新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ギャガ 公式サイト:https://gaga.ne.jp/happynewyear/
[2021年/韓国/138分]監督・脚本:クァク・ジェヨン『猟奇的な彼女』 脚本:ユ・スンヒ 出演:ハン・ジミン、イ・ドンウク、カン・ハヌル、ユナ(少女時代)、ソ・ガンジュン、イ・ジヌク
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