◼️ポン・ジュノ監督『殺人の追憶』で見せた、冷たく美しい佇まい

 その後の韓国映画の可能性を多くの日本人に予感させたポン・ジュノ監督の名作『殺人の追憶』(2003年)。当時26歳のパク・ヘイルが、2人の刑事(ソン・ガンホキム・サンギョン)に厳しく追及される連続強姦殺人事件の容疑者を演じた。

 田舎町のセメント工場で初めて姿を見せたときの冷たく、美しく、曰くありげな佇まいは、 “代役が成立しない” 役者を決定づけていた。

◼️明るい笑顔と声が清々しい『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~

『初恋のアルバム ~人魚姫のいた島~』(2004年)は、パク・ヘイル独自の存在感が、陰キャラだけでなく陽キャラでも光ることを証明して見せた作品だ。離島の海女(チョン・ドヨン)をやさしく見守る郵便配達を演じたパク・ヘイルの笑顔と声は、五月の鯉の吹き流しのように清々しかった。

 なお、本作はパク・ヘイルの妻のその後を50代前半のコ・ドゥシム(『椿の花咲く頃』『私たちのブルース』『カーテンコール』)が、娘の彼氏を20代後半のイ・ソンギュン(『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』『パラサイト 半地下の家族』)が演じている。