★高橋尚子の裏ベスト
●『最愛の敵〜王たる運命〜』
出演:イ・ジュン、カン・ハンナ、チャン・ヒョク ※ディズニープラス「スター」で独占配信中
激しい権力闘争が渦巻く宮廷で絶対王政をめざす若き王イ・テ(イ・ジュン)と、それを阻もうとする“陰の権力者”左議政パク・ゲウォン(チャン・ヒョク)。イ・テは密かに想いを寄せる両班の娘ユ・ジョン(カン・ハンナ)を妻に願うのだが、ゲウォンの陰謀に巻き込まれ離別。数年後、再びイ・テの前に現れたジョンは、政敵ゲウォンの“姪”となっており……。
愛する者を傷つけなければならないことに苦悩するイ・テの姿が胸に迫り、切なさでいっぱいに。朝鮮版「ロミオとジュリエット」的設定だが、それぞれの立場に葛藤しつつ、どうにか相手を守りたいと思う強い愛がびしびしと伝わり、彼らの心の揺れに見入ってしまう。王としてのカリスマと一人の女性を想う男としての深い愛情を細やかに演じたイ・ジュンの魅力を再発見すると同時に、運命に翻弄されながらも凛と強く生きるヒロイン、ジョンを好演したカン・ハンナにも拍手。
そして、圧巻は左議政を演じたチャン・ヒョク。彼の政治的矜持、大妃とのプラトニックな愛にも惹き込まれた。
●『その年、私たちは』
出演:チェ・ウシク、キム・ダミ、キム・ソンチョル ※Netflixで独占配信中
ひどい別れ方をした元カップルが再会。高校時代に撮影したドキュメンタリーがバズったとこにより、“10年後の今”もう一度2人のドキュメンタリーを撮ることになることから始まる繊細ロマンス。『梨泰院クラス』のキム・ダミと、『パラサイト 半地下の家族』のチェ・ウシクが主演カップルを演じ、話題に。些細なことでぶつかったり、すれ違ったりと、男女の恋愛の機微を繊細に描き出しており、共感を誘う。
だが、もっとも気になったのは、2人の親しい友人であり、密かにヒロインを想い続けている三角関係の一端を担ったキム・ソンチョルだ。2人のドキュメンタリーを撮る監督でもあり、彼の複雑な心情が絡み合っていくさまがヒリヒリして、心掴まれた。また、3人それぞれの心の傷、胸に隠す秘密、それがどう癒されていくかという過程も丁寧に描かれており、ひたひたと胸に染み入る物語だった。キム・ソンチョルは『ブラームスは好きですか?』もぜひ観てほしい。
●『青春ブロッサム』
母校ソヨン高校に教育実習生としてやってきたソマン(ソ・ジュヨン)は、そこで思いがけない人に出会う。それは、高校時代、密かに想いを寄せ合ったハミン(ソ・ジフン)の弟ジェミン(キム・ミンギュ/2001年生)だった。ジェミンは周囲に兄の存在を隠しており、兄のことを知るソマンの登場に動揺するが……。
2016年、ヒロインのソマンの高校時代の恋物語と、2022年現在の学生たちの恋模様が行き来しながら描かれる青春ラブストーリー。特に、ソマンの“後悔”となっている2016年のハミンとの物語は、サスペンス的な要素もあり、目が離せない。
成績優秀でクラスでも人気があるが、実は心のうちが読めない二重人格的雰囲気を持つハミンを、『代理リベンジ』『コッパダン〜恋する仲人〜』のソ・ジフンがミステリアスかつナイーブに演じ、“青春の傷み”を体現。ヒロインのソマンを演じるのは、『浪漫ドクター キム・サブ2』『都会の男女の恋愛法』のソ・ジュヨン。10代特有の眩しくもほろ苦い初恋の感情を2人が瑞々しく演じている。
PRODUCE101出身のキム・ミンギュ、IZ*ONE出身のカン・ヘウォンらが、2022年の初々しい青春模様を紡ぎ、胸キュンさせてくれる。原作は人気Webマンガ。単なる青春ものにとどまらず、“あのときの後悔”に向き合い、乗り越えていく若者たちのドラマが大人の心にもじんわりと響く。