韓国ドラマは、韓国国内だけでなく、日本のドラマでは考えられないようなさまざまな国でロケを敢行している。

 かつては、例えば『パリの恋人』でフランスのパリ、『バリでの出来事』でインドネシアのバリ島などと、かなりメジャーどころでの撮影が多かったが、2010年あたりから海外ロケ地がマニアック化した。今もオフィスドラマの名作として愛される『ミセン -未生-』ではヨルダン、パラレルワールドドラマの傑作『ナイン〜9回の時間旅行〜』ではネパールでロケをしている。

 韓国ドラマは、海外ロケのシーンをとても美しく、臨場感たっぷりに見せる。韓国ドラマだけでなく旅好きでもある私は、こうしたシーンを旅視点でも存分に楽しんでいるわけだが、この「旅心誘う韓ドラ」シリーズでは、観ると旅に出たくなるような韓国ドラマを紹介していきたいと思う。

■『愛の不時着』は“旅韓ドラ”!北朝鮮の鉄道シーンはモンゴルで撮影

 第1回目は、コロナ禍の中で韓流ファンをググっと増やすことに大貢献した『愛の不時着』を挙げたい。

 個人的には、ブームになる前からめちゃくちゃハマった一作だ。ただ、韓国ドラマとしてはかなりベタなラブストーリーだったため、これほど世界的にヒットするとは予想できなかった。主演のヒョンビンソン・イェジンが結婚したことで、今や伝説的なドラマになってしまった感がある。

 スイスのユングフラウ地方で撮影された2人の出会いのシーンとラストシーン、スイスの小さな町イゼルトヴァルトで撮影されたヒョンビン扮するリ・ジョンヒョクが湖畔でピアノを弾くシーンなども話題になった本作だが、『愛の不時着』を勝手に“旅韓ドラ”と思っているのは、何といっても北朝鮮のシーンが魅力的だったから。

 韓国でも北朝鮮の描写に注目が集まったそうだが、北朝鮮に不時着してしまったユン・セリ(ソ・イェジン)とともに、北朝鮮を旅している気分にさせてくれる一作なのだ。

 例えば、物語の舞台のひとつとなる北朝鮮の市場。ジョンヒョクがアロマキャンドルを掲げてセリを探すシーンも人気になった。個人的に市場が大好きで、旅先で必ず行くスポットだが、劇中の市場はロシアや中央アジアやバルカン半島の市場にとても雰囲気が似ていて、ごちゃごちゃ商品が並べられている感じもとてもリアルで、見ているだけでワクワクする。

 さらに「おおっ!」と大興奮したのは、5話目のシーンだ。ジョンヒョクとセリが平壌駅に向かう列車に乗るのだが、車内販売や食堂車が登場し、「地方の特産物を紹介します~♪」などと歌う楽団が車内を練り歩き、古き良き列車旅の風景を見せてくれるのだ。

 仕舞いには列車が停電のために立ち往生し、草原の彼方から何かが走って向かって来ると思ったら、何と乗客目当てのたくさんの物売りたちだった。いやぁ、これぞ旅の光景! 撮影時は9月だったにもかかわらず、とても寒かったそうだが、焚火の灯りがロマンチックで、物売りたちから買ったトウモロコシがとても美味しそうで、私も列車で立ち往生して草原で一晩明かしてみたいと思ってしまった。

『愛の不時着』の平壌駅として撮影されたウランバートル駅のプラットホーム