――演技する上で一番集中が難しかったシーンはありましたか?

 犯罪者と対面してプロファイリングをするシーンは、没入すればするほど心も精神も全て辛かったです。怒りの感情を押さえつけながら犯罪の事実を「話」として聞いていると、犯罪者である「その人の話」に同化しますし、さらには頷いてしまっている自分自身を発見した時、演技ではあるけど受け入れたり、共感しないようにしようと、ずっと自らの考えを警戒していたように思います。

――ソン・ハヨン以外に演じてみたい役があるとしたら?

『悪の心を読む者たち』に出てくる犯罪者の役を演じてみたいです。前から知っている犯罪者という形を脱して、定型化されていない人物を表現してみたいと思いました。

――アドリブなどありましたか? それはどんなシーンですか?

 毎シーン、アドリブがありました。アドリブはセリフではなくアクションでお見せしました。ソン・ハヨンは言葉が多い人物ではないので、目つきや行動で見せるアドリブが毎シーン5~60%はあったように思います。ソン・ハヨンがクク・ヨンスとの会話後に少し眺める動きはアドリブです。

――撮影裏話や、空き時間の想い出など、撮影エピソードを1つで結構ですので、教えてください。

 警察、科学捜査隊、プロファイラー等、専門の職種の人物を演技してみると、セリフも多いですし、特に専門用語が多くて、全ての俳優たちがセリフを間違わないようにいろんな努力をしていました。その中の一つが、カメラが回ってからセリフを間違えてNGを出したら、その人がご飯をご馳走することにしていたのが一番記憶に残っています。

――本作はキム・ナムギルさんにとってどんな作品になりましたか?

『悪の心を読む者たち』はある意味、大衆的ではなく興行性がないものをテーマにしている作品ともいえます。けれど、このような作品もうまく制作されれば認められるということが確認されましたし、自信にもなった作品として残ったことがうれしいです。俳優として少しだけ成熟した演技をお見せできたように思い、さらに意味深いものになりました。

『悪の心を読む者たち』©SBS