ストーリーを追ったり、俳優の演技を堪能したりするだけが映画やドラマの楽しみ方ではない。ある作品で共演した俳優二人が、別の作品でまったく違うキャラや違う関係で再会するのを観るのも大変おもしろい。

 Netflix映画ランキング1位を獲得するなど、今話題沸騰中のNetflix映画『キル・ボクスン』は、冒頭からそんな楽しみを与えてくれる作品だ。

『キル・ボクスン』で再会したのは、韓国映画界のカリスマ俳優ファン・ジョンミンと、主演ドラマNetflixシリーズ『イルタ・スキャンダル ~恋は特訓コース』も大ヒット中のカンヌ女優チョン・ドヨン

 韓国映画好きなら、二人が共演した映画『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年)をすぐに思い出すだろう。

◼️『ユア・マイ・サンシャイン』のファン・ジョンミンとチョン・ドヨン

『ユア・マイ・サンシャイン』でファン・ジョンミンが扮するのは、純朴過ぎる農村青年(36歳)。対するチョン・ドヨンは、わけありの茶房アガシ(ちょっとHな喫茶店の接待嬢)。

 最初は客とプロの関係だったが、茶房に通い詰める農村青年の情熱に接待嬢が負け、二人はほどなくして結ばれる。

 しかし、誰もが予想できるように、数々の困難が二人を襲う。責任を感じた接待嬢は姿を消すが、農村青年はどこまでも追いかける。

 仕切り越しに再会した二人。涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、仕切りを乗り越えようとする農村青年。その涙に、心を閉ざしていた接待嬢は抑えていた感情をあふれさせる。

 笑ってしまうほど愚直で美しい場面だ。ファン・ジョンミンの2000年代のイメージはこの映画で決定づけられた。