医師チャ・ジョンスク』韓国での視聴率がぐんぐん伸びているが、それに合わせて個人的なハマり具合も爆上がりしている(日本ではNetflixで配信中)。

 正直、韓国ドラマとしては、それほど目新しいところがあるドラマではないように思う。

 長年、主婦をしていた女性が目覚めて社会と関わろうと奮闘するドラマとしては、チェ・ジウ主演の『2度目の二十歳』などもあるし、人妻×不倫する夫×不倫女性×人妻に興味を持つ年下男性……の愛憎劇なんて、「イルイルドラマ」か「週末ドラマ」か何かで見たことがある。

 でも、これが、なぜかめちゃくちゃ面白い。

 何も考える必要はない。ただドラマを見始めて、そのドラマの船に乗っているだけで、笑って泣いて、胸を熱くさせてくれる。

■『医師チャ・ジョンスク』のミラクルな面白さ、その理由は?

 韓国ドラマは、特に新鮮なわけでも、話題性が高いわけでも、作品性に優れているわけでもないのに、キャスト、設定、ストーリーなどが絶妙なバランスを保ち、奇跡のように面白くなる作品が時々ある。

 このドラマの場合、共同演出を務める2人の監督も脚本家も、これまでそれほど大きなヒット作を手掛けているわけでもなさそうで、まさにミラクルといえるのかもしれない。

 本作の特に抜きん出ているところは、物語の起伏のつけ方、ではないか。“悲しみ”と“喜び”、“涙”と“笑い”といった真逆なものが、うまい具合に交互に配されている。だから、それぞれの感情がより大きく深く感じられる。

 その真骨頂ともいえるのが、第10話目。ヒロインのジョンスクが、不倫夫の悪行をすべて知り、大ショックを受けて悲しみに暮れる。

 その回の最後に、雨の中を疾走するオープンカーの天井が閉まらず、ずぶ濡れになり、思わず女2人で大爆笑するというシーンが登場する。ちょっと深刻になりそうな展開を吹き飛ばすサイダー的な痛快シーン。「何と素晴らしき構成!」と客観的に考えるよりも先に感動し、号泣していた。