■ヒロイン役のオム・ジョンファ、ライバル役のミョン・セビンに胸アツ!

 ジョンスクを演じるオム・ジョンファの功績も大きい。もともとは一本気で心優しい女性が、キム・ビョンチョル演じる夫をものすごい勢いでビンタしたり、ケーキに顔を押し入れたりする姿は、もう痛快そのものだ。

 最近では『私たちのブルース』に出演して注目されたオム・ジョンファは、1990年代から人気のスター歌手で“韓国のマドンナ”としても知られるが、デビューしたのは映画。かつてはよりコケティッシュな雰囲気で、セクシーなイメージが強かったけれど、以前から自分の力で生きていこうとするヒロインを演じることが多かった気がする。

 そんな彼女の出演映画の中で『医師チャ・ジョンスク』を観て思い出したのが、ファン・ジョンミンと共演した『ダンシング・クイーン』だ。

『医師チャ・ジョンスク』では20年ぶりに医師の世界に足を踏み入れる主婦を演じるが、『ダンシング・クイーン』では20年ぶりにダンス歌手に挑戦する主婦に扮していた。夫との関係性が違うので夫婦の結末は異なる可能性はあるものの、ヒロインが誰かの犠牲にならない人生を歩み始める姿はとても似ている。2つの作品を観比べてみるのも面白いだろう。

 ちなみに、『医師チャ・ジョンスク』で敵の女性役を演じているミョン・セビンも、90年代から活躍しているベテラン女優。

 先日、韓流20周年に絡んだ原稿を書くために、あの『冬のソナタ』を演出したユン・ソクホ監督の貴重な公式ガイドブックを久々に開いたら、若かりし頃の彼女の写真がばっちり掲載されていた。1998年に放送されたユン・ソクホ監督の『純粋』で新人女優ながらヒロインに抜擢され、一躍注目されたという。

 ここのところ、『シュルプ』のキム・ヘスや『クイーンメーカー』のキム・ヒエなど、Netflix作品でアラフィフ世代の女優が大健闘を見せているが、そうそう簡単に今の今まで生き残れるわけではない(と、件の公式ガイドブックを見てさらに思った。何と姿を見なくなった俳優の多いことか!)。

 90年代から活動する2人の女優が、2023年の今、ライバル役を演じて韓国テレビ界やNetflix界隈を賑わせていると改めて知ると、ドラマを観ながら何だかさらに胸が熱くなる。