■長らくバイプレイヤーを演じてきたチョ・ジヌンの演技にも注目!

 車イスに座ったままゆえ、表情の演技が冴えわたったソル・ギョングも魅力的だったが、人のよさが垣間見えてしまうヤクザ役のチョ・ジヌンも事実上の主役にふさわしい熱演だった。

 デビューから6年ほどでトップスターとなったソン・ソックのような俳優もいるが、チョ・ジヌンのように下積みの長い俳優にはどうしても肩入れしてしまう。40代後半の彼の出演作は映画だけでも50本を超えている。

 1999年にドラマのエキストラ出演でこの世界に入り、2004年のクォン・サンウ主演映画『マルチュク青春通り』で不良高校生を演じて以来、バイプレイヤーとしてコンスタントに映画に出演。2011年の映画『悪いやつら』でチェ・ミンシクハ・ジョンウと渡り合うヤクザ役で、ようやく日本の人にも認知される俳優に。2014年の映画『私たちは兄弟です』で主役を得るまでに、15年を要している。その後、映画業界に打撃を与えたコロナ禍を迎える不運はあったが、『消えた時間』『デッドマン』『警官の血』などで主役を張り続けている。

 映画出演が多いチョ・ジヌンだが、ドラマにも出演している。百想芸術大賞のTV部門作品賞など数多くの賞を受賞した傑作ドラマ『シグナル』(2016年)では、キム・ヘス扮するヒロインが捜し続ける先輩熱血刑事役で高い評価を受けた。

 人間の強さと弱さを併せ持つキャラクターをナチュラルに演じるチョ・ジヌンにはこれからも注目していきたい。

チョ・ジヌンとその弟役のキム・ミンソクソジュを飲みながら語り合う場面が撮影されたチャガルチ市場のホルモン横丁
チョ・ジヌンとその相棒役のチン・ソンギュが密談するシーンが撮影された松島海水浴場スカイウォーク