●ハン・ソッキュ『ミスター主婦クイズ王』(2005年)
シム・ウナと共演した映画『カル』(1999年)をピークにメインストリームから遠ざかり始めていた1990年代のトップ俳優ハン・ソッキュが、ビッグカムバッグを期して臨んだ作品だが、興行成績はふるわなかった。
これも『チム~あこがれの人~』同様、セクシャル・マイノリティの話ではなく、同情すべき理由で経済的に追い込まれた主夫(ハン・ソッキュ)が主婦限定のクイズ番組の賞金目当てに女装して出場するというストーリー。ハン・ソッキュの女装の完成度はともかく、ハートウォーミングな作品で日本人向きと思われるので、配信などで見つけたらぜひ観てほしい。
朝鮮王朝時代の旅芸人に扮したイ・ジュンギとカム・ウソン、国王(燕山君)に扮したチョン・ジニョンの熱演で、1200万人以上を動員した大ヒット作。その涼しげな目鼻立ちから「女より美しい男」と評されたイ・ジュンギが日本で言う女形の芸人を演じ、ファンをうっとりさせた。
単なる女装ではなく、王様と芸人仲間(カム・ウソン)との微妙な三角関係に性の匂いは感じたが、時代劇、それも旅芸人の話であるため、韓国でも拒否感を覚えた人はあまりいなかったようだ。
●パク・ジョンミン『ただ悪より救いたまえ』(2020年)
美しいかどうかはともかく、トランスジェンダー役がもっともハマったのが本作のパク・ジョンミンだろう。セクシャル・マイノリティとしての描かれた方はステレオタイプだったが、ファン・ジョンミンとイ・ジョンジェが血の抗争を繰り広げる中で、観る者をホッとさせる役割はじゅうぶん果たしていた。
パク・ジョンンミンは本作で青龍映画賞助演男優賞と百想芸術大賞映画部門助演男優賞を受賞。映画はコロナ下の韓国で430万人以上を動員している。