■地方のライブバーのポスターで見かけた女性歌手の名前は?

 映画でも、過去の人気歌手が地方のライブバーで歌ったり、鳴かず飛ばずの歌手が地方の名産品イベントで歌ったりするシーンがある。

 真っ先に思い出すのが『ラジオスター』(2006年)で、1988年の大賞受賞歌手チェ・ゴン(パク・チュンフン)が京畿道・ミサリのライブバーで歌うシーンだ。第一線から退いて久しい彼は酒を飲んで舞台に立つのが常で、客席の不倫カップルから数万ウォンのチップでアンコールを要求されたことに腹を立てトラブルを起こしてしまう。

 ミサリはステージ付きのカフェバーが集まっていることで1990年代から有名だ。私はソウルの東のはずれの江東区に住んでいるため、ミサリにはアクセスがよいのでドライブがてらよく出かけていた。

 15年くらい前だったか、ミサリのライブバーの宣伝ポスターに歌手カン・スジの名前を見つけたことがあった。1990年代半ばには日本でもデビューし、ゴールデンタイムのバラエティ番組にまで出ていた私と同い年の女性だ。浮き沈みの激しい歌手の人生にはこうした切ない話がつきものらしい。

『無人島のディーバ』のユン・ランジュはあるテレビ番組に出たのを契機に再び脚光を浴びる。その番組は一時期売れた歌手を招き、過去の自分の歌唱力に挑戦させて勝敗を視聴者投票で決めるものだった。

 現実にも似たような番組があるのだが、我が国では歌の世界にも過酷なスペック競争が持ち込まれるのかと、ため息が出た。

地方にはナイトクラブ(ディスコ)も健在なので、ゲストとしてプロの歌手が招かれる。写真は2004年、私の地にあったナイトクラブに1980~90年代の人気歌手ユ・ミリが出演することを告げる自転車宣伝部隊