Netflix配信の話題作『無人島のディーバ』で私が注目するキャラクターは、キム・ヒョジンが演じる歌手ユン・ランジュだ。

 パク・ウンビン扮するヒロインのソ・モクハが憧れる歌姫で、2008年当時は人気絶頂だったユン・ランジュだが、15年後の現在はテレビなどのメインストリームの仕事はほとんど回ってこない。生活も肌も荒れていて、全盛期を過ぎたと言うより、落ちぶれているというのが実情だ。

 ちなみに、演じているキム・ヒョジンは、映画『春の日は過ぎゆく』『オールド・ボーイ』やドラマ『花様年華~君といた季節~』『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』などで知られる実力派トップ俳優ユ・ジテの妻である。

韓国エンタメ界の切ない現実、頂点を極めた歌手とドサ回り

 それでも一度頂点を極めた歌手はなんとか食べてはいける。日本の演歌歌手やお笑い芸人のように、韓国でも地方のお祭りや企業の宴会、商業施設の周年パーティ、学園祭などで歌う仕事、つまりドサ回りがあるからだ。

『無人島のディーバ』のユン・ランジュも、地方の名産品(ツルニンジン)のイベントに呼ばれていた。

 日本では俗に「営業」と呼ばれるドサ回りはお笑い芸人が席巻していると聞くが、我が国の場合、もともと歌が好きな国民だけに、まだまだ歌手の出番は多い。

全羅北道金堤の地平線祭りで余興として行われたのど自慢大会。こうした大会にはたいていゲストとしてプロの歌手が招かれる