パク・ミニョン主演『私の夫と結婚して』やシン・ヘソン主演『哲仁王后~俺がクイーン!?』など、近年「タイムスリップ」を題材としたドラマが多い。

 そんな中でアン・ヒョソプ主演の『いつかの君に』が秀逸だ。本人が別の時代に移動するのではなく、「たまたま同じ容姿であるまったくの別人の中に移動してしまう」という、複雑かつ独創的なタイムスリップだからだ。

 それゆえ、ドラマを一度見ただけではすべてを理解することできず、もやもや感が残った。二度目はメモを片手に年表を作成しながら視聴してみた。すると、ようやく前半の伏線が後半に少しずつ紐解かれていくのがわかり、見落としていた部分を再確認することができただけではなく、ラストシーンの余韻にも浸ることができた。

■アン・ヒョソプの目の演技が光る『いつかの君に』

『いつかの君に』でアン・ヒョソプは、チョン・ヨビン扮するヒロイン(ハン・ジュニ/クォン・ミンジュ)の恋人ク・ヨンジュンと、彼とまったく同じ顔をした1998年のナム・シホンという、時代をまたぐ2人の人物を演じた。年齢も境遇も異なる人物を演じ分けるアン・ヒョソプの演技力に強く魅了された。

 特に着目したいのが、アン・ヒョソプの目の演技だ。シホンの男らしさとヨンジュンの一途な愛が、いずれも目で表現されていて、視聴者はそこに強く惹かれるのだ。

 このドラマで、ヨンジュンと親友チャニョン(ミン・ジヌン)が働く家具工房は、開港時に外国人の社交場だった仁川広域市、旧・済物浦倶楽部で撮影されている。

 いっぽう、1998年にミンジュたちが通う高校は、ツタが絡まる近代建築の校舎でとても魅了的だった。撮影に使われたのはソウルの延世(ヨンセ)大学のキャンパスだ。

『いつかの君に』で1998年にミンジュとシホンが通う高校のロケ地、ソウル・延世大学

 また、ミンジュの叔父が営む「27レコード」のある街並みも印象的だった。撮影は、全北特別自治道・全州にある棲鶴洞(ソハットン)芸術村で行われた。

 棲鶴洞は、画家や彫刻家たちのアトリエや写真家が運営する韓屋写真館などがある静かなエリアだ。年間1千万人を超える観光客が訪れる全州韓屋村から全州川を隔ててわずか5分ほどの距離にも拘わらず、都会の喧騒を忘れてのんびりと過ごすことができる全州の穴場的スポットだ。

『いつかの君に』でミンジュ、シホン、インギュ(カン・フン)が3人で写真を撮った「27レコード」のロケ地、全北特別自治道・全州市の棲鶴洞芸術村