■『パラサイト』他、格差を象徴する場としてのスーパーマーケット
スーパーマーケットで買い物するシーンは、貧富の差を見せつけるときにも使われる。
米国アカデミー作品賞・監督賞など4冠を達成した映画『パラサイト 半地下の家族』。高級ワインや食材をカートに投げ入れる富豪の奥様(チョ・ヨジョン)。その後ろから死んだような顔つきでカートを押す、雇われ運転手(ソン・ガンホ)。貧と富のコントラストを鮮明にするシーンだった。
2010年の映画『ミス・ギャングスター』には、蚤の市で売る品物を高齢女性三人組(ナ・ムニ/『アイ キャン スピーク』、キム・スミ/『エージェントなお仕事』、キム・ヘオク/『男と女』)がスーパーで万引きするシーンがあった。
韓国で初めてオリンピックが開催された1988年の映画『チルスとマンス』では、看板描きのチルス(パク・チュンフン)が、明洞のロッテデパートで優雅に買い物をするガールフレンド(ペ・ジョンオク)を見かけるが、ペンキで汚れた自身の姿に引け目を感じ、声をかけられないシーンがあった。
また、スーパーマーケットが出てくる作品のなかでも、格差を生む現実の社会問題をストレートに扱ったのが2015年の映画『明日へ』だ。スーパーの非正規雇用の女性(ヨム・ジョンア、息子役にド・ギョンス)たちが不当解雇に怒り、ストライキから売場での籠城に至る。
これは2007年に現実に起きた大型スーパーの非正規労働者大量解雇事件がモチーフになっている。本作でのスーパーマーケットは、『ハピネス』とはまた違ったリアルな戦場だった。
主婦や家族連れ、カップルが楽しげに買い物をする姿が見られるスーパーマーケットだが、ドラマや映画を通して見ると悲喜こもごもである。