そして、実際に観たヒョンシク・トートの美しいこと! 圧倒的クールビューティーぶりに、心射抜かれたほどです。歌も上手ければ、長身で手脚が長く、顔が小さいという抜群のスタイル。もう目がくぎ付けです。これが、2018年12月のことでした。

 3カ月後、今度は地方公演までヒョンシク・トートを観劇に行きます。正直、12月はまだ“型”を意識しているふしがあったのですが、短い期間のなかで、彼はすべてがすっかり自分のものとなっていて、堂々たる「黄泉の帝王」として存在していました。

 声量もたっぷりで聴かせてくれるし、とにかく圧倒的に美しい。

 すべてのしぐさに余裕を感じられて、手すりに軽くもたれて座りながら振り返るさまや、手を胸元にあてて恭しくお辞儀する姿など、ノーブルで硬質、かつ静謐な美しさがあるのです。

 ダンスの体の切れも美しく、まるで宝塚のダンサーのよう! ロングコートに、深めにかぶったシルクハットもよく似合い、口元しか見えなくても、それがまた美しいという……「美しい」しか言葉が出てこないのです。

「見惚れる」とは、こういうことなのね……と、幸福に浸りながら見入っていたほどです。

『ドクタースランプ』でも、ふいに見せる憂いを帯びた表情がとても美しかったヒョンシク。いつか遠くない未来、ミュージカルの舞台に再び立ってほしい、才にあふれた俳優だと思います。