では、その瞳の魅力は、どこから生まれたのか。

 『星から来たあなた』で爆発的人気を得た当時、キム・スヒョンはこう語っている。

「目で相手との距離を表現すること。それが女性でも男性でも、目の演技で、相手と押したり引いたりの演技がしたい。自由自在に目で表現できる俳優になりたい」

 彼にとって、常に“目”は大きなテーマだった。それから約5年を経て、除隊後の復帰作となったのが『サイコだけど大丈夫』だ。

 このドラマで彼が演じたムン・ガンテは、これまで以上に“目”の人だった。

 自閉症スペクトラムの兄(オ・ジョンセ)を守ることに追われ、自分の感情を抑えてきたガンテの目は、口元は笑っているのに泣いて見え、気にならずにはいられない。

 そんなガンテもヒロイン、ムニョン(ソ・イェジ)の前では知らぬ間に心を解き放たれ、悲しかった目は、次第に柔らかで穏やかで優しい目に変わっていく。まさに、眼差しだけで彼女との心の距離の変化を見せている。

 劇中ムニョンは、彼に向かって「目がきれい」と言う。目が心を映し出すとは、まさに、キム・スヒョンのことのようだ。

『涙の女王』のペク・ヒョヌもしかり。どんなに妻のヘインと冷戦状態になっていても、どこかに純粋な愛情が残っている。その温かくて真っ直ぐな心根が、ヒョヌの眼差しから感じられ、キュンとなってしまうのだ。

 泣きの演技にも定評があるキム・スヒョン。切ない展開が予想される『涙の女王』の今後の演技にも注目だ。

●キム・スヒョンProflile

 1988年2月16日生まれ。180cm、AB型。高校時代から演技活動を始め、舞台や短編映画などを経て、2007年『キムチ・チーズ・スマイル』で本格デビュー。2011年の青春ドラマ『ドリームハイ』でブレイク後、『太陽を抱く月』『星から来たあなた』とヒット作を連打し、スターダムに。除隊後の復帰作『サイコだけど大丈夫』も高い評価を得て、“高視聴率俳優”の座をほしいままにしている。運動神経も抜群で、ボウリングの腕はプロ並み。