■アン・ジェホンおすすめ出演作!イ・ソムの彼氏を演じた映画『小公女』、釜山の高校バスケ部監督を演じた最新映画『リバウンド』ほか
そんなアン・ジェホンが決定的な存在感を示したのが、映画『小公女』(2018年)だ。本作は、「衣食住」の「住」を断捨離してホームレスになった主人公(イ・ソム)の話なのだが、彼女は人生に欠かせないものとして、「タバコ」「高級ウイスキー」「恋人」を挙げていた。その恋人を演じたのがアン・ジェホンだ。
やさしさと誠実さだけが取り柄の彼氏は、これ以上はないハマり役だった。この二人がある決断をするシーンは、なんとも切なく美しかった。本作主演のイ・ソムとはその後、ドラマ『LTNS』(2024年)の夫婦役で再共演している。
さらに、大ヒット映画『エクストリーム・ジョブ』のイ・ビョンホン監督の初ドラマ『恋愛体質~30歳になれば大丈夫~』(2019年)では、チョン・ウヒ演じるヒロインの脚本家とロマンスを繰り広げるドラマプロデューサー役をコミカルに好演して話題を集めた。
2020年には『エクストリーム・ジョブ』制作チームによる映画『シークレット・ジョブ』で、ついに映画でも主役らしい主役の座を獲得した。本作は配信サービスなどで視聴できるので、彼の晴れ姿(弁護士兼動物役だが)をぜひ観てほしい。『恋愛体質』で共演したチョン・ヨビン(『ヴィンチェンツォ』)も出演している。
今回、百想芸術大賞TV部門助演男優賞を受賞したNetflix『マスクガール』は、好青年ばかり演じてきたアン・ジェホンがまさに化けた作品だ。オタク感を強調するための日本語のセリフや、今回の授賞スピーチでの「アイシテル」のひとことは日本の視聴者にも大きなインパクトを与えただろう。
『マスクガール』で彼の母を演じたヨム・ヘランと二人で同助演賞を独占しているのも快挙である。
いっぽう、イ・ビョンホン監督が手掛けたNetflix近作『タッカンジョン』(2024年)のヒロイン(キム・ユジョン)に思いを寄せるほんわかしたコミカルな役は、本来の彼らしさ満載でファンをホッとさせたことだろう。同作で名コンビを組んだリュ・スンリョン(『エクストリーム・ジョブ』)も、今回の百想芸術大賞TV部門で大賞など3部門を受賞した『ムービング』主演俳優として授賞式に出席。SNSではアン・ジェホンの助演賞を祝うコメントを投稿している。
最近の主演映画『リバウンド』(2023年)は、現在日本で公開中だ。釜山の高校バスケット部の実話を元にした作品で、アン・ジェホンは元バスケ選手で出身校のバスケ部の新人監督という役どころ。実際、釜山出身のアン・ジェホンにとって、釜山を舞台にした本作にはかなり思い入れがあったであろう。撮影は『マスクガール』と同時期だったというから、その演技の幅広さにも感服する。
ごく一部の俳優が脚光を浴びている裏で、多くの俳優が浮き沈みを経験したり、消えていったりしていることを思うと、アン・ジェホンのように約15年間で30作余りの映画に出演、ドラマでも栄誉ある賞を獲得して、ゆっくりと大輪の花を咲かせようとしている俳優は心から応援したくなる。