以前から注目していた俳優が頭角を現しているのを見るのはうれしいものだ。最近だと、ペク・ヒョンジン(1972年生まれ)という俳優の出番が急増している。

 名前を聞いてピンと来なくても、パク・ヒョンシクハン・ヒョジュ主演の『ハピネス』でもっとも嫌な奴を演じた俳優といえば思い出すのでは? そう、主人公の家の階上に住む皮膚科医師役の彼である。クセのある男、嫌な男を演じさせたら一級品のバイプレイヤーだ。

■円満な人間関係から遠ければ遠いほど、持ち味を発揮するバイプレイヤー

 アン・ウンジン主演のNetflix配信作『終末のフール』でペク・ヒョンジンが演じているのは、大統領秘書室長役。物語の舞台である街の有力者(キム・ヨンオク)の息子である。権力や立場を笠に着る嫌らしい役は彼の真骨頂といえるだろう。

 リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ、チョ・インソンらが主演のヒット作『ムービング』では、工作員の役。第1話の後半で、後ろ髪だけ長い1990年代風のヘアスタイルと180センチを超える体躯でゴルフクラブを振り回し、リュ・スンボムと闘うシーンは迫力満点だった。それまではいかにも性格俳優といった役柄が多かったのだが、アクションもこなせるとは意外だった。

 日本でも劇場公開された映画『高速道路家族』では、主人公(ラ・ミラン)の夫に扮していた。微妙な夫婦関係の妻と言い争うシーンは胸が痛くなった。なにしろ円満な人間関係から遠ければ遠いほど持ち味を発揮する稀有な俳優だ。

 ラ・ミラン、イ・ドヒョン、アン・ウンジン出演のNetflix配信作『良くも、悪くも、だって母親』では、ラ・ミラン扮する主人公の養豚場に言いがかりをつける、近隣住人のトロット作曲家を演じていた。村の個性的な住人たちのなかでも、その嫌味なキャラクターと風貌で存在感を放っていた。