U-NEXTで配信中の『遊んでくれる彼女』が、めちゃくちゃ面白い。韓国では、JTBC水木ドラマで放送。少しずつ視聴率を伸ばし、話題性ランキングでも上位に食い込んでいる。
かなりドタバタなラブコメディではあるのだが、ツボを心得ているのか、初回から笑ってほろりとさせられた。
■『遊んでくれる彼女』見どころは?オム・テグ扮するコワモテ主人公が、かわいすぎる!
物語は、過去を清算して食肉加工会社「渇いたシカ」を経営する元ヤクザのボスのソ・ジファンが、”ミニお姉さん”として活動するキッズ系クリエーターのコ・ウナに恋をして……というところから始まる。
わりとオーソドックスな展開だが、主人公とヒロインが不器用なほどに純粋という点がポイントに。全体的にユーモラスな雰囲気が漂うのも魅力で、元ヤクザの主人公が営むのが食肉加工会社(舎弟もとい部下たちは肉の扱いに長けている……)というのもブラックな笑いが込められているような気がするし、まるで子どもをあやすように彼らの世界にふわっと侵入していくヒロインもかわいくておかしい。
そして何といっても、このドラマをほかにはない味わいにしているのは、主人公ジファンを演じるオム・テグである。
オム・テグは、2016年に公開された映画『密偵』の悪役の橋本役で広く注目されるようになった硬派なイメージの俳優だ。『密偵』で見せた強烈な印象、するどい眼差しと濃い顔つき、独特のハスキーボイスもあってか、これまでコワモテな役を多く演じてきた。激しい暴力シーンもこなし、劇中で傷だらけになっていることも多かった。
だが、2020年のバラエティ番組「車輪のついた家」で、役柄とはまったく異なる、驚くほど話せないシャイで素朴な人柄を披露し、そのギャップが話題となる。実は、筆者もそこからファンになった1人である。
本作では、そんなオム・テグが、見た目はシュッとしたヤクザ風なのに、天真爛漫なヒロインに恋してペースを崩されていくジファンを、たまらなく愛らしく演じている。
子どもと遊ぶヒロインをこっそりのぞいたり、酔っ払って公園を走りまわり、滑り台やブランコで少年のようにはしゃいでヒロインと遊んだり、まさかここまで“かわいい”の引き出しをもっていたとは……と驚かされる。オム・テグのこれまでの役柄、普段のイメージを知っていなくても、「こんな韓国俳優いたっけ?」と、新鮮な感動を覚えるはず。
そう感じさせるのは、数多くの独立映画での経験、そして数々の端役・脇役を経て培われた演技力があるゆえだろう。もちろん「あのオム・テグがこんなキャラを?」というギャップも面白いのだが、軽めのラブコメディだからこそ、その説得力のある演技が光っている。
劇中で、「肩ヤクザ」(肩幅が広いという意味)とヒロインに言われて喜ぶ場面があるが、肩が張った後ろ姿のそこはかとない寂しげな雰囲気も、そう簡単に出せる味わいではない。