AI(人工知能)のめざましい発展により、人間が成しえないことも可能になった昨今。人間社会さえ制御されてしまいそうなAI技術の勢いに、一抹の不安を覚えるのも事実である。

 Netflixで配信中の韓国映画ワンダーランド: あなたに逢いたくて』では、「死者との別れを惜しむ必要がなくなるAIサービス」が物語のカギとなる。(以下、一部ネタバレを含みます)

■『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』見どころは?存在感ある演技が光るタン・ウェイ

 AI技術により、仮想空間に復元した死者と現実社会に生きる家族や恋人をビデオ通話で結ぶ。本作は、そんなAIサービス開発会社「ワンダーランド」のビデオ通話サービスを契約した人々が織りなす、せつなさともどかしさを描いたオムニバス作品だ。

 母と娘、恋人、父と息子、祖母と孫と、関係は違えども、死者とのビデオ通話サービスを利用することで、各々の関係に大きな変化が生まれてくるという共通点がある。

 本作を手掛けたのは、韓国・香港・アメリカ合作映画『レイトオータム』のキム・テヨン監督。キム監督の妻であり、『レイトオータム』のヒロインでもあるタン・ウェイは、幼い娘を残してこの世を去った在韓中国人のバイ・リーを演じている。

 死期が近づいたバイ・リーは、幼い頃の夢だった考古学者として仮想空間で生きることを希望し、ワンダーランド社と契約する。母が亡くなったことを孫に知らせたくない祖母は、ビデオ通話サービスを利用しつつも、孫が仮想現実の娘と毎日会話する姿を見て、違和感を覚え始める。

 行方不明になった娘を探しに、仮想空間から現実の世界へ行こうとするバイ・リーの言動は、涙を誘う。その矛盾した言動により、ワンダーランドのシステムに大きな影響を与えることになるのだが、ここでもタン・ウェイの存在感がある演技が光っている。

■仮想空間と現実の世界の2役を演じ分けるパク・ボゴム

 キャビンアテンダントのジョンイン(ペ・スジ/『スタートアップ:夢の扉』『イ・ドゥナ!』)は、事故で意識不明となった恋人テジュ(パク・ボゴム)が恋しくてたまらない。いつも自分をリードしてくれたテジュに遭いたくて、宇宙飛行士という設定で仮想空間に生きるテジュとの会話を毎日楽しんでいる。

 そんなある日、テジュが奇跡的に目を覚ます。しかし、脳機能の損傷により、これまでとは別人のようなテジュの言動に、ジョンインは次第にイライラが募ってきた。つい、仮想空間のテジュとのビデオ通話に癒しを求めてしまう。

雲が描いた月明り』や『ボーイフレンド』など、数多くのドラマや映画で人気を博したパク・ボゴムが、スジ扮するジョンインを優しく気遣う仮想空間のテジュと、心もとない現実のテジュの2役を見ごとに演じ分けている。

映画『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』Netflix独占配信中