当初はチ・ジニが演じるダメ亭主の再生を中心的に描いていたNetflix配信ドラマ『家いっぱいの愛』は、元妻のクム・エヨン(キム・ジス)にフォーカスが当たってから俄然面白くなってきた。彼女の悩みを共有しながら見ていると、勝手にサポーターになった気分になってくる(以下、一部ネタバレを含みます)

■Netflix『家いっぱいの愛』で描かれる元夫婦と親子の関係、見どころは?

「ピョン・ムジン、何もしないで!」

 それが、ムジン(チ・ジニ)と夫婦であった頃のエヨンの口癖だった。

 何をしても失敗ばかりしていたムジン。とばっちりを受けるのは常にエヨンと長女ミレ(ソン・ナウン)と長男ヒョンジェ(ユンサナASTRO)。しまいには、ムジンとミレの親子関係が最悪になり、ミレは父親をずっと軽蔑していた。ムジンが家族から見放されてしまったのも自業自得だった。

 一時は死んだと思われていたムジン。青天の霹靂で、財産家となって再びエヨンたちの前に現れてきた。それも、彼女たちが住むマンションのオーナーとして……。

 絶対に裏がある、と勘ぐったエヨンはムジンをまったく信用していなかった。ミレは相変わらず父親を蔑んだままだ。彼女が父親を見下す視線が恐ろしいほどだった。

 そういう立場に追い込まれていたのも当然だった。それだけに、ムジンは今までの過去を反省してエヨンの前で謙虚にふるまった。

 最初は信用していなかったエヨン。しかし、ムジンの献身的な態度を見ていて、少しずつ心が動いてきた。特に、かつてプロ野球のスター選手だったムジンが仲間からバカにされたときは、エヨンが精一杯に演技をしてムジンのプライドを守ってあげた。

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 エヨンは本当に情の深い女性だ。彼女はミレが、父親のいなくなった家庭で必死になって大黒柱になってきたことをよく知っている。大手スーパーのエリート社員となって家族を支えてきたのだ。それゆえ、エヨンとヒョンジェの生活が守られてきたことも確かだった。しかし、いつまでも無理をさせておくわけにはいかない。

 ミレが家族のために自分を犠牲にしてきたことがわかっていたエヨンは、ミレが一人住まいをできるようにセッティングした。しかし、それはミレ自身が望まないことだった。それゆえ親子の間で葛藤が起きたのだが、エヨンは躊躇しなかった。いずれはミレの幸せにつながることだと決断したのだ。