■『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』
最後は、下半期の序盤の7月26日配信で、映画ではあるが、韓ドラでも活躍する俳優が数多く出演する『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』をご紹介したい。
本作は、パク・ボゴムの除隊後初お目見え映画である。日本でも高い人気を誇るパク・ボゴムだが、2022年2月に除隊してからミュージカルの舞台には立ったものの、映像分野ではなかなか俳優としての姿を見せてくれていなかった。この作品は兵役前に撮影したものだが、それでも久々に俳優パク・ボゴムが見られる意味で貴重である。
そんなパク・ボゴム以外にも、本作には主演級俳優がずらり。ペ・スジ、チョン・ユミ、チェ・ウシク、中国からは本作の監督である『レイトオータム』のキム・テヨン監督の妻でもあるタン・ウェイも参加し、そのほかコン・ユも特別出演している。
そうした俳優陣のことばかりに目がいきがちな一作ではあるが、内容も実に面白い。先に言ってしまうと、かなり泣いてしまった(悲しみの涙というより感動の涙)。
物語の舞台となるのは、亡くなった人や意識のない人をAIで再現しネット上で話せるサービスを提供しているワンダーランド旅行社。そんな旅行社と契約する、いくつかの家族や恋人の話が重層的に綴られていく。
本当は今もどこかで生きているんじゃないか……。それは、愛する人を失くしたすべての人の祈りのような想いであるように思う。その偽りがすぐにバレてしまわないよう考えてか、劇中ではAIで再現された人々は遠く離れた異国や宇宙で暮らす設定になっている。
一見、素晴らしいサービスのように見えるが、人の気持ちは単純ではない。映像の中ではイキイキと存在しているのに、実際に会ったり触れたりすることができないことが、サービスの利用者の心にのしかかっていく。
パク・ボゴムは、そんな本作で、実在の人物である昏睡状態の男性テジュと、ワンダー旅行者のAIによって再現された宇宙飛行士のテジュを演じている。ペ・スジ演じる恋人のジョンインは、宇宙にいるAIのテジュと毎日のように会話を楽しんでいたが、ある日、実在のテジュが昏睡から突然目覚める。待ちに待った再会のはずなのに、ジョンインは困惑する……。
SFファンタジーながらヒューマンドラマとしても見応えがあり、死生観やこれからのAIとのつき合い方も考えさせる本作。時間をしっかり設けてじっくりと向き合いたい一作だ。
●配信情報
Netflix映画『ワンダーランド: あなたに逢いたくて』独占配信中
[2024年/韓国/115分]監督・脚本:キム・テヨン
出演:タン・ウェイ、ペ・スジ、パク・ボゴム、チョン・ユミ、チェ・ウシク、パウ・ヘイチン、コン・ユ、タン・ジュンサン