韓国ドラマの有力なジャンルである「ラブコメ」には傑作が多い。韓流ブーム以降、過去20年余りの人気ランキングでベスト3を選出すると、究極的に選ばれるのがここにピックアップした3本である。

 ラブコメとしてどこが一番面白いのか。そこを論じてみよう。(以下、一部ネタバレを含みます)

■韓流ラブコメ「究極の3強」は?ベスト3に選ばれたのは傑作ぞろい!

●『私の名前はキム・サムスン

[2005年/MBC/全16話]演出:キム・ユンチョル 脚本:キム・ドゥ

 出演(役名):キム・ソナ(キム・サムスン)、ヒョンビン(ヒョン・ジノン)、チョン・リョウォン(ユ・ヒジン)、ダニエル・ヘニー(ヘンリー・キム)

 制作されてから20年が経過している。それでも、あの面白さはまったく色あせていない。それほどの大傑作だった。何よりも、キャラの設定が良かった。

 主人公はパティシエのキム・サムスン。女性らしくない名前とポッチャリ体型で多少のコンプレックスを抱えている。しかし、バイタリティがあって、決してめげない。まさに「愛すべきキャラ」だ。

 相手役は、レストランのオーナーで気難しいジノン。紳士なのだが、人を寄せ付けない冷たさも持っている。そんな人物を当時新鋭だったヒョンビンがクールに演じている。

 ヒョンビンはこのドラマで大ブレイクして、今に至るまで20年間もトップクラスの俳優となっている。

 物語は正反対の性格の2人が契約恋愛をするプロセスを楽しく描いている。サムスンは酒癖が悪くてジノンを困らせる。そういうシーンが出る度に笑いが止まらなくなる。

 主人公2人の対比が見事であり、奔放なサムスンがジノンの凍てついた心を溶かしていく様子にホンノリさせられる。最後まで視聴者を飽きさせない展開も見事だった。

(C)2005 MBC

DVD販売元:アミューズ

●『キム秘書はいったい、なぜ?

[2018年/tvN/全16話]演出:パク・ジュンファ 脚本:ペク・ソヌ、チェ・ボリム

 出演(役名):パク・ソジュン(イ・ヨンジュン)、パク・ミニョン(キム・ミソ)、イ・テファン(イ・ソンヨン)、カン・ギヨン(パク・ユシク)

 パク・ソジュンとパク・ミニョンという美男美女が純粋なラブロマンスを演じたら、それだけで傑作になりそうだが、ドタバタを交えたラブコメになったことが痛快だ。

 主人公のイ・ヨンジュンのキャラが特異。数か国の外国語をネイティブのように操り、超人的な計算能力と記憶力を持っている。しかし、自分を長く支えてくれたキム秘書がやめると言い出したら、ガタガタと精神が崩れてしまった。そのギャップが極端に面白い。

 キム秘書は精神の「自由」を取り戻したかったのだ。それで、新たな人生を歩みだそうとしたら、イ・ヨンジュンが彼女に執着して、あの手この手で引き留めにかかる。挙句の果ては、自分が愛されているのではないか、と勝手に思い込んでしまう。

 かくして、2人の心理戦が始まる。あれほど完璧な頭脳を持っていたはずなのに、恋愛の駆け引きでは未熟すぎる……それがイ・ヨンジュンの弱味だった。キム秘書の言葉や態度が彼の論理を吹き飛ばしていく。そこが一番愉快なところだ。

『キム秘書はいったい、なぜ?』 (C)STUDIO DRAGON CORPORATION

DVD&BD発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン