韓国映画に登場した日本式の納豆

 筆者の知る限り、韓国映画に納豆は二度登場している。

 ひとつは、パク・ヘイルシン・ミナ主演の『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』(2014年)だ。それはパク・ヘイル扮する大学教授が慶州で出逢った日本人旅行者から植民地支配について謝りたいと言われ、どういうわけか韓国語で「ボクは納豆が好きです」と返し、話をはぐらかすところから始まった。

 そのあと、教授はシン・ミナ扮する地元民らの飲み会に飛び入り参加するのだが、そこで持参した納豆のパッケージを開け、箸でかきまぜてそのまま食べようとし、周囲から奇異の目で見られるというシーンだった。

映画『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』で、パク・ヘイル扮する大学教授が納豆を食べようとするシーン。配給:A PEOPLE (C)2014, LU FILM & INVENT STONE

 もうひとつはチェ・ミンシクが現職のソウル市長に扮した映画『ザ・メイヤー 特別市民』(2016年)。

 再選のためならどんな汚い手も厭わない市長が、高級な日本料理店のカウンターで昵懇の記者(ムン・ソリ)に自ら海苔で巻いた納豆をあ~んしろと言いながら食べさせようとする場面だった。だが、記者は「納豆は足みたいな匂いがするから食べません」とことわっている。

 いずれも主人公のエキセントリックさを際立たせるために納豆を使っているようだが、両作の公開から10年が経過し、ソン・ソックが納豆好きを公言するくらい韓国に浸透した今では、すでに役不足といえるかもしれない。