韓国人どうしが初対面で互いに自己紹介したとき、なんらかの共通点があると、二人の距離が一気に縮まることがある。ひとつは年齢だ。生まれ年が同じだとわかると、急に「チング(友)」と呼び合ったりする。これは日本も同じだろう。

 もうひとつは故郷。これも日本と同じだろう。同じ道、同じ市郡生まれなら急にお国訛りが出たりする。なかでも釜山人どうしが出会うとかなり盛り上がる。次いで全羅道全北特別自治道全羅南道)だろう。

 もっとも、韓国には慶尚道vs全羅道という独特な地域対立があるので、この道出身者が出会ったときは、世代によっては微妙な空気になることもある。

 もうひとつは男性限定だが、徴兵で志願者だけが配属になる海兵隊(ヘビョンテ)だ。

 韓国ドラマや映画を見慣れている人なら、おわかりだろう。今年、6月27日に待望のシーズン3の配信開始が決まったNetflix『イカゲーム』。配信中のシーズン2にも、そんなシーンがあった。 

■『イカゲーム』シーズン2でも描かれた海兵隊出身者の強い絆

『イカゲーム』シーズン2で、カン・ハヌル扮するデホが、同じく海兵隊出身のゲーム参加者、チョンベ(イ・ソファン)と急接近する場面は、韓国人には見慣れたことというか、「またか」と思うくらい使い古された演出だ。

 それでもあえてこの場面を入れたのは、外国人視聴者を意識してのことではないだろうか。軍隊の話題は当事者でない者、女性にとっては退屈きわまりないことが多い。しかし、外国人、とくに軍隊のない日本の人にとっては興味深いことのようだ。

 敵地に海から上陸して攻撃したり、敵が自国に海から侵入してきたときに迎撃したりする水陸両用の海兵隊は、訓練が特に厳しいため隊員どうしの結束力が強く、除隊後もその関係が続くことが多い。「ハンボン ヘビョンウン ヨンウォニ ヘビョン(ひとたび海兵となれば生涯海兵)」という合言葉はそれを象徴している。

 たがいに海兵隊出身であることがわかると、先輩後輩の関係を確認の上、固い握手を交わしたり、抱きしめ合ったりすることも珍しくない。

 海兵隊出身者の結束力が強いことは、旧日本軍同様、韓国海兵隊に大きな影響を与えた米国海兵隊も同様だ。往年の名作映画『タクシードライバー』では、冒頭、タクシー会社に面接に来た主人公(ロバート・デニーロ)が面接官とやりとりする。主人公が海兵隊出身であるとわかると、同じく海兵隊出身の面接官の態度が急に軟化する場面があった。

 最近の韓国ドラマだと、今年シーズン2の配信が予定されているアクション作品『ブラッドハウンド』のゴヌ(ウ・ドファン)とウジン(イ・サンイ)をバディとして結びつけた共通項がそれだった。

 たがいに海兵隊出身であることがわかり、ウジンがゴヌに何期生か確認すると、ゴヌより2歳年上ゆえ先輩面していたウジンが顔色を変えて立ち上がって敬礼し、言葉が突然敬語に変わった場面を覚えている人もいるだろう。