高句麗の初代王・東明聖王(トンミョンソンワン)ことチュモンを主人公に、王となるまでの道のりを冒険活劇として仕上げた大ヒット時代劇『朱蒙〔チュモン〕』(2006年)。

 当時としては破格の総製作費400億ウォンをかけて作られた極上のエンターテインメント作品で、たしかな演出と脚本、俳優力のすべてが評判となり、週間視聴率35週連続1位、最終回の視聴率は59.1%と、国民的ドラマに。日本ではフジテレビで放送され、話題を呼んだ傑作だ。

■『朱蒙〔チュモン〕』​はソン・イルグクが建国神話の王を体現! 最高視聴率59.1%獲得した、ヒーローアクション時代劇の金字塔

●『朱蒙』あらすじ

 紀元前108年。強大な力を誇る漢(かん)の侵略によって古朝鮮国が滅亡。流浪の民たちを率いて戦いを続けていたタムル軍の将軍ヘモス(ホ・ジュノ)は、ハベク(河白)族の君長の娘ユファ(オ・ヨンス)に命を救われる。その後、ヘモスは、彼を危険視するブヨ国の重臣たちの陰謀で行方不明に。ヘモスの子を身ごもっていたユファは、悲しみのなかで男子を出産する。密かにユファを愛する太子クムワ(チョン・グァンリョル)はユファを側室にし、生まれた子チュモンを我が子として育てる。  

 20歳になったチュモン(ソン・イルグク)は、彼を疎む長兄テソ(キム・スンス)、次兄ヨンポ(ウォン・ギジュン)からたびたび命を狙われるように。意気地がなく、武芸のできないチュモンが窮地に陥るなか、商団の娘ソソノ(ハン・ヘジン)に助けられる。

 やがて、母ユファたっての願いで、武芸を学ぶことにしたチュモンは、山奥の牢獄にいる盲目の男(実父ヘモス)に師事。ところが、その師もテソの手にかかり命を落としてしまう。恨みをはらすためにも太子の地位をめざすことにしたチュモンは、ソソノの商団に身を寄せ、生きる力をつけていく。

 そして、自身の出生の秘密を知ったチュモンは、亡き父の遺志をつぎ、新しい国作りをめざすように。だが、彼の行く手には数々の困難が待ち構えていた。

■ダメ男から英雄へ、その“王への道”をドラマチックに描くエンタメ活劇。RPGゲームのような展開、個性豊かなキャラクターが躍動

●『朱蒙』みどころ

 神話(天帝と結ばれた娘が生んだ卵からかえった王)に伝わる高句麗の始祖チュモン。その「王への道」、覚醒と成功までが綴られる物語。やはり面白いのは、甘ったれのへなちょこ末っ子だったチュモンが、国内の権力争い、兄テソとの確執、宿敵・漢の鉄騎軍との攻防といったさまざまな苦難を乗り越えて、国王となっていく過程の描き方だろう。

 劇中「情けない奴」と言い放ったソソノをはじめ多くの人間が、大志を抱き人間として大きく成長していくチュモンに魅了され、彼を支えるべく集まっていく。それは、なぜか? カリスマやオーラからかけ離れているチュモンは「守ってあげたい、この男を一人前にしたい」というような保護本能をくすぐる男なのである。